新たな駅ビルとして誕生した「瓦町FLAG」
「ことでん」の愛称で香川県民に親しまれている「高松琴平電気鉄道株式会社」。
その瓦町駅に平成27年10月、「瓦町FLAG」が誕生しました。
これまでの経緯や取り組み、今後の展望について、高松琴平電気鉄道株式会社の小野勝之さん、濱中祐紀さんにご説明いただきました。
●オープンまでの販促企画
鉄道会社という強みを生かし、自社所有の交通インフラである電車、バス、タクシーを活用した販促を展開。
・ラッピング電車FLAG号の運行
ラッピング電車「FLAG号」の車内で瓦町FLAGに出店する店舗とのコラボレーションによるポップアップショップを開店。
高松築港駅〜仏生山駅間を3往復し、約300人のお客様に一足早く瓦町FLAGを体験していただきました。
・小さなFLAG
周辺の商店街の各店舗にPR協力を依頼。
「か」「わ」「ら」とそれぞれ書かれた爪楊枝を飲食店ではメニューに添えてもらい、
全部集めてFLAG号に乗車すると車内での抽選会に参加できるという催しを実施。
お客様が事前に商店街店舗をまわることで回遊性を促進。
・商店街エール交換FLAG
周辺商店街の支柱やビル周辺の手すりに、商店街が「瓦町FLAG」に対する思いを込めたFLAGを掲出したことに対し、周辺商店街や市民に向けたことでんの思いをアンサーFLAGとして掲出。
この取り組みは新聞やテレビなど多数取り上げられました。
瓦町FLAG、オープンまでの経緯
平成26年3月、瓦町駅ビルの高松天満屋が閉店したことを受け、同年4月には双日商業開発株式会社とPM委託契約を締結。一部既存テナントの営業を継続しながら高松天満屋との原状回復交渉、リニューアル工事監理、テナントリーシングなどの開業準備を進めました。
そして平成27年10月23日、瓦町FLAGはオープンしました。
地上12階、地下3階の既存の建物を生かし、内装のリフォームや設備的な改修を実施。
オープン時の入居テナント数は83店舗。香川初出店は37店舗(うち四国初出店は28店舗)。
アパレルを中心に生活雑貨やホビー、カルチャー、文具、カフェなど多彩なテナントが出店しています。
中央商店街の歩行者通行量の推移を見ると、オープンした10月の休日の通行量は前年比較で116%、約2万人の増加を記録しています。
※PMとは…資産の維持管理をソフト面から行うこと
市民交流プラザの開設
大きな見どころの一つが、8階に開設した「市民交流プラザ IKODE瓦町」。
高松市の行政機関が入居し、証明書発行などの手続きができるコーナーをはじめ、気軽に運動ができる健康ステーションやアートステーション、市民図書館、会議室など様々な設備を整えました。
平成28年度の来場者数は年間206,025名(月当たり17,169名)
その内訳は以下のようになっています。
市民サービス 17%
健康ステーション 37%
アートステーション 8%
市民活動センター 9%
中央図書館 30%
集客力強化のための取り組み
平成28年4月、総合特別区域法に基づく規制緩和により、駅の商業利用ができるようになりました。
そこで、瓦町FLAGでは集客力強化のために様々な取り組みを開始。瓦町FLAGの入口がある駅のコンコースでは随時イベントを行い、集客に繋げました。また、外国人観光客の増加にあたり、コンコースにはナビステーションを設置。多言語対応できるスタッフが常駐し、インバウンド対策も強化しています。
●地域コミュニティ・周辺商店街による特産品の販売
商業利用が可能となった駅のコンコースでのイベントにおいては、「地域コミュニティや周辺商店街による特産品の販売など、地域の皆様と連動して頑張っていかなければなりません。ですから、ほかの地域から呼ぶのではなく、まずは地元の商店街の皆様と一緒にイベントを展開していきたいと考えています」と濱中氏。
主に、以下の商店街やコミュニティ協議会との連携を図っています。
・周辺商店街
常磐町商店街・南新町商店街・田町商店街・ライオン通商店街
・コミュニティ協議会
下笠居地区・大野校区・川東校区・塩江地区・三谷地区・木太地区・男木地区・女木地区
瓦町駅周辺まちづくり協議会
瓦町駅周辺商店街を中心に、地域の活性化の具体的なアイデアを探り、活性化をまとめるため、平成19年4月に発足した「瓦町駅周辺まちづくり協議会」。
メンバーは周辺商店街や高松琴平電気鉄道株式会社を主要団体、香川県や高松市、商工会議所、地銀などをオブザーバーとして構成。
瓦町FLAGだけでなく、駅周辺の商店街も含めみんなで協力しながら地域活性化に向けて動いていこうという思いのもと、協議会が中心となり、ガラポン抽選会など瓦町FLAGと周辺商店街が連動した企画にも積極的に取り組んでいます。これらのイベントは季節に応じたものも含め、継続的に行うことを大切にしています。
また、香川大学の学生が瓦町駅周辺を取材・編集したフリーペーパーも定期的に発行しています。
運営会社変更という転機
平成29年5月、瓦町FLAGは、運営委託会社を変更するという転機を迎えました。
衣類・雑貨などの物販を専業とする商業中心型PM会社である双日商業開発株式会社から、オフィス・ヘルスケア施設・アミューズメント施設・データセンターなどのリーシングや運営ノウハウを保有する総合型PM会社である伊藤忠アーバンコミュニティへ変変更。店舗の誘致も進み、今後は瓦町ビルの不動産収益の安定的な確保と向上に取り組んでいくための決断でした。
そして、買い物客をターゲットとした「モノ消費」だけでなく、消費者が体験して楽しむ「コト消費」にもより一層力を入れ、通勤・通学客を取り込むことを目的としています。
今後、目指していく方向性とは
運営委託会社が変わった平成29年度、瓦町FLAGでは
・施設来館者数の増加と不動産賃貸収入の確保
・大幅なコストダウンとシンプルな運営体制の構築
をテーマに、次の4点をポイントとして事業を展開しています。
1. 地下1階稼働率100%
念願の地階フロアがオープン。食品・飲食関連フロアを開設することで、生鮮食品や日用品をお買い求めの地元の人々の集客が見込めます。ご近所さんのために自転車の駐輪場も整備。
平成29年6月に稼働率100%を達成しました。
2. コト消費のテナント誘致
物販以外の時間消費型「コト消費」のテナント、定期来館が期待できる足元商圏のテナントを積極誘致。
子どもの英会話教室や学童保育、カルチャースクールなどを開設しています。
3. 不動産収入確保
リーシングの手法を大幅に見直し、地域密着・地域でつく上げる施設へ。
4. コストダウンの徹底
PM・BM会社などの変更やグループ会社とのビル管理業務効率化の推進、運営体制の簡素化。
※BMとは…資産の維持管理をハード面から行うこと
高松市中心商店街で生き残っていくために…
高松市中心部は、先に訪れた丸亀町商店街をはじめ、たくさんの商店街がひしめきあっています。
そのなかで、どう特色を出していくのか。参加者からの質問に対して、「北の三越、南の瓦町FLAGということで、住み分けは意識しています」と小野氏。
三越を核としてハイブランドショップが数多く並ぶ丸亀町商店街対して、瓦町は庶民的なまちづくりをイメージ。
また、駅直結ビルという強みを生かすために、英会話やジムなど、仕事帰りなどに気軽に寄れるスクールのテナントリーシングを強化。さらなる北と南の住み分けを目指しているといいます。
では、テナントリーシングはどのように進めているのか。
「テナントの運営管理は伊藤忠アーバンコミュニティに委託していますが、私たちも地域の皆さんとの橋渡し役を担い、ことでんとしての立ち位置で携わっています」と小野氏。
開業から2年が経過し、契約満了につき店舗の入れ替えや空き店舗もあるそうですが、平成29年10月時点での稼働面積は全体で約8258坪。稼働率は93.7%と高い数字を維持しています。
そして「今後はより具体的にテナントリーシングを進めていくことが課題」と話されるように、ターゲットを見据えたリーシングを成功させ、賃料収入獲得を目指し積極的に展開を続けています。
ご説明をいただいた後、各フロアを見学しましたが、特に屋上の休憩スペースや市民交流プラザなどの充実ぶりには参加者の皆さんも感心されていました。