新規客が反応する4つのアピールポイントの見つけ方
「お客様が自分のファンになってくれるところからスタートすると、商売は非常に楽になります。では、そんな新規客を増やすにはどうすればいいか。それは、『この店に行ってみたい!』『この店で買いたい!』と思わせるコツを掴むことです」と山田氏。
岐阜県中津市付知町という人口5800人の小さな町に嫁いだ山田氏は、眼鏡・宝飾店の嫁として現場接客27年。「机上の理論だけでは商売という現場は絶対に成り立たない」という想いのもと、現在も週に2日は店に立ち、お客様と接しています。
今回は、ご自身の経験に加え、全国各地の店舗商売の集客・販売のコンサルティングから様々な業種の事例を用いて、「新規客が反応するアピールポイント」を教えていただきました。
「店舗で売る」ために必要な仕事とは?
1.店舗づくり(外観、内観しつらえ)
2.集客(マーケティング・宣伝広告・マスコミ戦略)
3.出会い(名簿化・情報収集・顧客管理)
4.定期接触(ニュースレター・ダイレクトメール)
5.セールス(商品選定勉強・ヒアリング・トーク)
6. 接客セールスステップ(挨拶からお辞儀まで)
7.数字管理(帳簿・資金繰り・分析)
以上の7つが挙げられます。
今回は、新規客を増やすためにすべきこととして、2番目の「集客」に注目。チラシの話を中心に、ホームページやソーシャルネットワークにも応用できる内容です。
新規客が求めること。満足から共感へ
心が満たされるか、ものが満たされるか。
人間は、足りないものが満たされると満足を感じます。ものが不足していた時代には、自分の欲しいものが手に入ればそれで満足していましたが、今はものが安く簡単に手に入る時代。商品を揃えるだけでは、ネット販売に負けてしまいます。ですから、お客様の心を満たさなければなりません。
満足の先にある「共感」こそ、お客様がお店に求めていることです。
労働には肉体労働、頭脳労働、感情労働の3種類ありますが、感情労働は言い換えれば接客労働。お客様は、「自分を大切にして欲しい」という感情労働を店に求めています。いい商品、いい技術である事は大前提。そこに加えて感動労働が大切なのです。
気になる店を見つけました。でもなぁ…
気になる店を見つけた時、入ってみたいけど…8割の人はこう思うでしょう。
一体いくらなのかな?
自分の気に入るものがあるかな?
美味しいかな?
商品はちゃんとしているかな?
買わなくても出られるかな?
店内はどうなっているの?
駐車場は?
まずは、でもなぁ…の答えを新規客に伝えなければなりません。
店は、お化け屋敷と同じです。お化け屋敷は入口から見えるところに出口を作ると入店率が上がるといいますが、店も中がどのようになっているか分かれば入りやすくなります。「親切なお化け屋敷」を目指しましょう。
新規客が知りたい4つのポイント
お客様は店の何を知りたいのか。以下のようなアンケート結果があります。
★人(48%)
・生い立ち
・人生で大切にしていること
・仕事を絡めたプロフィール
★商品・技術・工夫(30%)
・他店と比べて自店の特徴・特長
・ズバリおすすめのポイント
・似たような商品と比べてどこがおすすめなのか
★場所(20&)
・店の内外写真
・地図、駐車場
・電話番号、営業時間
・HPやSNSへの案内
★価格(2%)
・いくら用意していけば恥をかかないのか
・最低〜中心〜最高が分かれば良い
人柄を感じてもらうと、初対面前に人間関係が作れる
このように、「人」を知りたい人は約半数もいます。
チラシには生い立ちや人生で大切にしていること、仕事を絡めたプロフィールなどを盛り込んでみましょう。さらには出身の学校や血液型、星座、ペットのことなど。
人は共通点を探す生き物ですから、自分と同じものが見つかると共感性が高まり、それだけで好印象に。また、顔写真を載せると信用度がさらにアップします。
チラシを通して初対面前に人間関係を作り、「あなたに会いに来たのよ」と言っていただける関係性を構築できればベストです。
「安くないと売れない」と思っていませんか?
一方、「価格」を知りたい人はわずか2%。しかも、「いくら持っていれば恥をかかないのか。価格帯がわかれば十分」という程度です。
お客様は、チラシの一番大きく目立つ部分を、店が一番伝えたいことだと受け取ります。例えば、価格を一番に持ってくると、価格重視のお客様が来ます。安さ重視の人は、いくら安くても「高い」と感じてしまいます。ですから、「価格」よりも「人」を伝えて、いいお客様を増やしましょう。
お店として大切にしていることを伝える
お客様は、店として大切にしていることが分かると、「私のこんな役に立ってくれるのね」と直感で理解します。
商品や技術の単なる説明ではなく、本当に必要なのは、自店ならではの微細な特長。
例えば、美容室なら、夏は冷房対策のひざ掛けを、冬は湯たんぽを用意するなど。お店はお客様のために何かやっているはずですから、その「当たり前」を伝えることが大切です。
「この店に行くと自分がどんなふうに扱われるか」がお客様は知りたいのです。
また、商品・技術面で大切にしていること。たくさんの商品の中からなぜこの商品を選んだのか。そして大切にしていることを持続するためにしている努力や工夫。同業者から見たら当たり前の事でも、お客様は素人ですから、そこを丁寧に伝えてあげることに大きな意味があります。そうすれば、価格重視ではなくいい顧客が来てくれます。
チラシづくりのヒント
いつも質問されることに答える
お客様がどんな商品、サービスを求めているのか、なぜうちの店を選んでくれたのか…。自分でも気づいていなかった自店の特長や強みを、お客様が教えてくれることもあります。
ぜひ目の前のお客様とコミュニケーションを持ち、貴重な声をチラシに反映させてみましょう。
商品は伝えすぎない
商品写真と金額がズラリと並ぶチラシは多いですが、商品を事細かに見せすぎると、それをネットショッピングの参考にされてしまい、新規客を逃す恐れがあります。商品は個別で載せず、集合イメージ写真程度にとどめておくことをおすすめします。また価格も800円〜5,000円など、価格帯を見せる程度で十分です。
キャッチコピーの落とし穴
とある花屋さんが、バラを売るためにキャンペーンを行いました。
さて、どちらが適切でしょうか?
A:妻の誕生日には、いつもバラの花束を買う
B:妻の誕生日には、いつもプレゼントに悩む
答えはBです。
実際の花屋さんがAを選んだところ、反応はゼロだったと言います。
なぜか?誕生日にバラを買うと決めている人は少ないかもしれませんが、何を選べばいいか迷う人は多いからです。
お客様の心に響くワードをチョイスするためにも、やはり現場に立ち、お客様の声を聞くことは重要であると言えます。
来店しやすい工夫
・店の内外写真を載せる
・電話番号、営業時間、定休日などの基本情報
・地図、駐車場、ホームページなどへの誘導
・取扱品目を載せる
単純に家から近いというのも立派な理由になります。
お客様が店に足を運ぶきっかけとなるように、できるだけ多くの情報を分かりやすく盛り込みます。
また、デザインの美しいチラシと、手描きのチラシなど、テイスト違いで数パターン作っておくのも有効。若い人にはデザイン性の優れたもの、ご年配の方には味のある手描きというように、ターゲットを絞った宣伝ができます。
小さなことから実践を!
「完璧を求めるよりも、今すぐできることからやってみてください。そうすると、とにかく覚えてもらえます。思い出してもらえます。まず人柄を感じてもらえるようにプロフィールを書く、そして自分が大切にしていることを伝える。そして新規客を自分のファンにしましょう」とメッセージをいただきました。
講演後、会場からはチラシ制作に関する参加者からの具体的な質問もあがるなど、とても有益な講演会になりました。
講師プロフィール
株式会社 ごえん 代表取締役
山田文美(やまだあやみ)氏
京都芸術短期大学卒業後、イラストレーターとして雑誌や小冊子の制作に携わる。結婚を機に電車も廃線になった町に嫁ぎ、「眼鏡・宝飾店の嫁」として商売を始め、大型店と競合しながらも定価販売を継続。地域シェア55%の経営を続けており、大型店に流れていた客を取り戻し、商売を再生している。
その経営手法・接客・販促物のユニークさから日経MJ一面カラーにて取材を受け、現在では「月刊商業界」「日経MJ」「月刊販促会議」など専門誌への寄稿・連載多数。全国の小売店からの要望でコンサル部門を設立し、地域密着型の勉強会を各地で開催している。地域密着型店舗の顧客獲得と売上アップ支援を得意とする。
主な著書に『大型店からお客を取り戻す“3つのしかけ”』(同文舘出版)、『「見込み客」を「成約客」に育てる“お礼状”の書き方・送り方』(同文舘出版)