地域外や日常の需要以外から新たな需要を効果的に取り込み、消費の喚起につなげる商店街等の取り組みを支援する、中小企業庁による「商店街活性化・観光消費創出事業」。
平成31年度予算の当事業に、松山中央商店街連合会、道後商店街振興組合、株式会社まちづくり松山の「松山市中心市街地活性化区域内商店街(中央商店街・道後)連携においてデータ分析に基づく戦略的観光消費創出事業」が採択されました。
令和元年9月の採択を受け、12月から翌3月まで行われた取り組みについてご紹介します。
データマーケティング環境を構築
松山中央商店街や道後商店街の周辺には道後温泉、松山城や坂の上の雲ミュージアムなどの観光資源がある一方、その資源を十分に活かせておらず、商店街へ人を回遊させる仕組みづくりが必要だという課題に対して、商店街への来街・回遊増加を図るため、周辺の観光拠点等における歩行者分析などのデータマーケティングを計画。
データマーケティング環境を構築し、商店街への来街の仕組みをつくり、アプリの提供により回遊性を高め、併せて効果的なイベントやPRを行うことで、観光客の来街・回遊増加を目指しました。
来街者捕捉カメラで来街者の動きを分析
本事業では、来街者捕捉カメラを使用したデータマーケティングを実施。道後温泉や松山城、松山市駅前、大街道・銀天街をはじめ松山中央商店街連合会内などに18台のAIカメラを設置し、来街者の動きを調査しました。
このAIカメラには顔認証システムが搭載されており、通行量だけでなく通行者の属性(年齢・性別など)を常時計測することができます。さらに顔認証システムにより同じ人物が観光地や商店街、公共交通機関などをどのように利用しているか、人の流れも分析することが可能。なお、一度捉えた通行人の顔は、画像・映像として保存するのではなく、以降数値化して表示するなどプライバシーにも配慮しています。
データを活かし、商店街活性化につなげる取り組み
こうして計測されたデータはデータマーケティングに活用されました。
商店街の消費拡大に向けた具体的なデータ活用方法としては、以下が挙げられます。
・QRコードで配信するクーポンやお得情報(店舗情報)の内容を随時調整するための検討根拠として使用する。
・ショッピング・飲食イベント開催に向けた検討根拠として使用する(日程、商品、催事内容、広告デザイン)
・デジタルサイネージで配信する広告内容(セール情報等)を随時調整するための検討根拠として使用する。
・情報発信でターゲットを絞っての事前告知や情報発信の時期を決める検討根拠として使用する。
QRスポットによる来街・回遊の促進
域外客や観光客、訪日ゲストが快適に回遊、滞在時間を増やすための仕組みとして、商店街内にQRを搭載した床面レリーフや俳句の町らしい句碑を設置しました。
アプリを通じて読み取るQRコードを記載した床面レリーフは、観光客等の目を引くために観光表示(歴史、文化などのPR)レリーフとしたり、『文学・俳句の町まつやま』をアピールするための俳句を記した句碑をあわせて設置したりするなど、街の魅力を伝える仕掛けを施しています。
大街道や銀天街には、『松山城下町ミュージアム』と題して、「松山城下図屏風 左隻」の原寸大レリーフなどが設置されており、来街者は楽しみながらまち歩きを行うことができます。
オリジナルアプリ「Sweet MATSUYAMA」の開設
歴史散歩の要素に加えて、今回の取り組みではお得感を演出し、購買促進につなげる仕組みづくりも行なっています。
「Sweet MATSUYAMA」というオリジナルアプリを通じて商店街のQRコードを読み込み、『松山城下町ミュージアム』をスタンプラリーのように回ることでお得なクーポンを発行。ゲーム的要素を盛り込み、楽しくお得にショッピングができる仕掛けにより、回遊、滞在時間の増加を図りました。こちらのアプリは松山市の中央商店街で利用できる電子マネー「machica」とも連動しています。
商店街活性化を図るインバウンド対策
本事業は、地域外や日常の需要以外から新たな需要を効果的に取り込み、消費の喚起につなげることを目的としています。そのため、域外の人々、インバウンドに向けた情報発信の強化を行いました。
前述の「Sewwt MATSUYAMA」は日本語・英語・繁体字・簡体字・韓国語の5ヶ国語表記を採用し、アプリと連動させたパンフレットも多言語対応のものを製作。観光地や商店街の店舗、松山グルメ、イベントなどお得な情報を発信し、インバウンドの消費拡大につなげました。
データマーケティング環境を今後のまちづくりに活用
本事業で構築されたデータマーケティング環境やQRコードスポットを生かした取り組みは、今年度限りではなく、補助事業終了後も継続されることが決まっています。商店街活性化の切り札として採用されたAIカメラによるデータマーケティング。PDCAサイクルを回す体制を整えた本事業モデルによる、中長期的・継続的な取り組みの今後に期待が高まります。