MSP MSP
まつちか まつちか

まつちか

銀天街 銀天街

銀天街 3丁目

銀天街 4丁目

大街道 大街道

大街道 1丁目

大街道 2丁目

道後商店街 道後商店街

道後商店街

まちペイ加盟店 まちペイ加盟店

まちペイ加盟店

商店街通信商店街通信

松山商店街通信てくてく

令和3年度第2回人材育成事業研修会

開催日時 令和4年2月15日(火)14:30〜16:00
開催場所 オンライン MAP
講師 中小企業診断士 橋本 泉氏

松山市商業振興対策事業委員会の主催により、令和3年度第2回人材育成事業研修会を実施。

新型コロナウイルス感染症の影響による非常に厳しい経営環境下において、いかに魅力的な店舗づくりを行い、集客へと繋げていくか。

今回のセミナーでは、中小企業診断士の橋本泉氏を講師に迎え、「ウィズコロナ・アフターコロナでの魅力あふれる店舗づくりとは」をテーマにご講話いただきました。

なお、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、オンラインで同時開催。講師の橋本氏をはじめ、参加者は全員リモートでの参加となりました。

地域で「なくてはならない会社・お店」になるために

中小企業診断士として、これまで全国の商工会議所や自治体、業界団体等にて講演を行ってきた橋本氏。

長年の現場経験とコンサルティングや取材・調査に基づいた「愛される店」「売れる商品」作りに関する的確なアドバイスで多くの小売店、会社を救って来られました。

 

講演を始めるにあたり、「厳しい状況も3年目に突入しました。価値観の変化もあり、お店の存在価値が見直されている今、足を運ぶ価値のあるお店は残り続けるというのが私の考えですし、実際にそういうお店を見てきました。今回は、地域でなくてはならない会社、お店になるにはどうすればいいかのヒントを見つけていただけたらと思います」と橋本氏。

 

自社・自店の魅力を再発見し、地域で「なくてはならない会社・お店」になるためのノウハウについて、具体例を交えつつ、わかりやすくご講話いただきました。

 

 

 

また来たい、買いたい店の要素とは?

自店や自社を説明するとき、「誰に」「何を」「どのように」売るかが決まっていると、会社・店としての一貫性が伝わります。

 

 

例として、薬局をドラッグストアにリニューアルするときに提案したストアコンセプトを紹介。

 

背景は、代替わりをして、ドラッグストアチェーンに代わるとき。

誰に→主婦が多く通る立地だったので主婦へ向けて

何を→特に力を入れて売ろうとするものは、ちょっとおしゃれなボディ&ヘアケア商品など

どのように→自然光が入る明るい店舗で、選びやすく手に取りやすい陳列。相談しやすいカウンターなどを用意

 

こうしたコンセプトが定まると、一本芯が通ります。

競争環境をどのように捉える?

次に、競争環境をどのように捉えるかについて、4つに分類されるマクロ環境において分析していく必要があるという橋本氏。

 

●Political 政治、制度

法律の新設、廃止、強化、緩和、政策

 

●Economical 経済環境

消費税増税、為替、株価、アメリカの政策、ユーロ圏の影響など

 

●Social 社会情勢

地球環境への配慮、SDGs、少子高齢化の進行、就労環境、価値観の変化など

 

●Technological

PC、インターネットの普及、AIの進化、SNS、キャッシュレス決済など

 

特にTechnologicalにおいては、ネットショッピングやデリバリーの普及が進み、SNSの活用やキャッシュレス決済も珍しい時代ではなくなってきています。

「この目まぐるしく変わる時代の影響が、みなさんの会社や商売にどうプラスに働くか、またはマイナスに働くか。あるいはプラスにできるか、マイナスにしてしまうか。それを考えていきたいと思います」

自社・自店のお客様はどのような方なのか?

自分の会社やお店のお客様を分類する要素は、性別や年代だけではありません。では、ほかにどんな要素があるのか。これをマーケティングでは市場細分化といいます。

 

市場は主に4つの切り口に分けられます。

地理的、人口動態、心理的、行動。

 

地理的変数は、地域(東京・大阪など)、気候(寒暖、季節など)、人口密度(都市部・郊外など)といった切り口。

人口動態変数は、年齢(若者・高齢者)、性別、家族構成、所得、職業などの切り口。

 

心理的変数は、主にライフスタイルとパーソナリティです。ライフスタイルは、どんな暮らしをしているのか。アウトドア志向かインドアかなど。パーソナリティは、一人ひとりの特性ですね。新しいもの好き、音楽好きなど。

そして行動変数というのはその人の行動です。経済性を求めるか、機能性を求めるか。

  

 地理的変数・人口動態変数と心理的変数・行動変数を掛け合わせること。どんな気持ちで、どんな人が、どんなときに必要としているのか。ということを考えてお客様を分類してみてください」

 

自店の立ち位置は?自店の強みは何?

競合他社を含めた自社の立ち位置、ポジションは何で決めるかというと、2つの軸です。

KBF(キービジネスファクター)→お客様が購入に踏み切る理由を考えます。

 

では、2つの軸をどうやって取るか、コツとしては、上と下、左と右は全く反対の言葉にすること。

まず対象客の軸は両極端な内容にし、軸は交わらないほうが望ましい。全く違う要素にすると、4つの枠にきれいに分かれます。

 

やりがちな悪い例としては…

縦軸に値段(高価格⇄低価格)

横軸に品質(高品質⇄低品質)

 

「高価格で高品質、低価格で低品質は考えられますが、高価格で低品質のものはあるでしょうか?これでは2つの軸をとっている意味がありません」

 

 ●美容室の例

単独機能⇄マルチ機能の軸に着目。

カットチャンピオンの店、直毛パーマ、シニアカットなど、何か得意分野を打ち出すのです。

人口動態変数や地理的変数も踏まえた上で新サービスを考えると、競合店舗から一歩抜き出すヒントが見えてきます。

 

会社やお店には購買代理人としての役割がある

では、自社や自店の強みをどこでどう発揮するか?

 

「会社やお店には、購買代理人としての役割があります。お店であれば、そこの地域で生活しているお客様に必要なものを代わりに仕入れて並べている。そこで価値を発揮しているわけです」

 

●製品から商品にする努力をしているか。

 

お店として製品から商品にする。500円で仕入れたものを1000円で売るということは、その500円分の価値を創出しなければ商品とはいえません。

 

お客様が買い物にかけるコストは商品代金だけでなく、交通費、時間、移動、支度も含めたもの。心理的な負担、体力的負担も全てコストになります。

 

実店舗に行くよりコストが少なくて済むネットショッピングに対抗し、「そこでしか提供できない何かを持っている」「足を運ぶ価値のあるお店」になることは、地域密着のお店にとって生き残り・発展の鍵。

 

「お店の目利き、見立て、フィッティング、相談に乗ってくれるなど、何か店としての価値を提供しているお店になれば、お客様が離れることはありません。そういうことをみなさんやっているはずですし、そこに企業理念、信念、人柄が垣間見えてきます」

 

 

どのようにお客様にアピールする?〜ポップにおける価値の伝え方〜

商品の価値をどうお客様にアピールするか。

特徴(Feature)・利点(Advantage)・利益(Benefit)・証拠(Evidence)。

この4段階「FABE」の法則でポップをかくと商品の魅力が伝わります。

 

それを忠実に実践されたお店のポップを写真とともに紹介。

 

●猫のおやつのポップ

特徴→化学的な合成品を使用せず安全を最大限配慮した猫用トリーツです。

利点→半生タイプで食べやすい。

利益→老猫、肥満猫、活発な猫チャンには特におすすめします

誰に対してどんなベネフィットがあるかをはっきり示し、さらに「12粒まで」と使うイメージまで説明されています。 

 

「文字だけのポップですが、読んでいる間に近づいていって、人が関心を持ってくれるという流れが生まれています。お店は静岡県の郊外店舗ですが、このポップを提示したことで注目する人が増えて、東海地方の売上1位になったそうです」

必要なことをちゃんと伝えれば、購買に結びつくという好例ですね。

 

お客様の「買いたい気持ち」を盛り上げているか

商品の品揃えや売り方、価格、接客などについては、「買いたい気持ちを盛り上げているか?」という視点で、以下のポイントをチェックしてみましょう。

 

①衝動買いしたくなる工夫をしているか?

②お試し、実演など工夫しているか?

③また来たいと思う情報が伝わるようにしているか?

④誰かに紹介したいと思うネタがあるか?

⑤メーカーの受け売りではない言葉を使って説明しているか?

⑥お客様に使用後の感想を聞いているか?

 

これらのポイントにおいても、ポップが重要な役割を担っています。

 

(例)富士山おむすびのり

文字情報だけのポップのときは売り上げが伸び悩んでいましたが、実際におむすびに使用したイメージをビジュアルで示したポップに変更したところ、爆売れしたそう。

ビジュアルで見せることで、お客様に商品の良さがきちんと伝わったことが売り上げにあらわれています。

 

●ポップは、はっきり主張することが大切!

ポップの研修会も行っていますが、手描きでわかりやすくというのもおすすめしています。

大切なのは、遠くからもはっきり見えること。遠慮がちではなく、しっかり主張することが大切。

 

売り場づくりは何から考える?

お店に入って物を買うまでにどれだけの関門があるでしょうか。

購買客を獲得するためには、「入りやすく、買いやすい売り場」に至る過程をクリアしなければなりません。

 

認識客数からスタートし、その何割かが立寄客になり、さらに入店客が何割か。それから店内を見てまわり、目に留まったものを買おうかなという検討を経て、購買客数になります。

ということは、一番最初の認識客数をどれだけ獲得できるかが重要。「それぞれのポイントをどれだけ引き伸ばせるかを考えていきましょう」と話されます。

 

また、表の下部の「感覚面」は清潔感、安心感、期待感。

これは業種業態問わず重要なポイントです。「何かここに来るとワクワクする」など。ベースアップの要素には十分なり得ます。

入りやすく、買いやすい売場づくり〜紳士服店の場合〜

「これは私が行った中で一番のびっくり案件です」と橋本氏も驚いた実例を紹介。

 

紳士服の仕立てをされているお店と聞いていたのですが、前を通っても何屋さんか全くわからなかったそう(写真のBefore参照)。

 

紳士服の仕立ての需要が減ったため、いつしか婦人服の売り場面積が増えてきて…という状態で、そもそも仕立てをしていることを知らない人が多かったという状態でした。

けれど、ご主人としては、紳士服を仕立てるお店として続けていきたいという気持ちがあるということで橋本さんに売り場づくりを依頼されました。

 

「Afterのように、生地を出して紳士服の感じを出したら、いきなり紳士服のお客さんが来店されたそうなんです。お店って何ができるのかをちゃんと伝えないと勿体無いなと改めて実感しました」

ライフスタイルアソートメント

顧客のライフスタイルのシーンに合わせて仕入れ方針を決定したり、売り場を編成したりすることを「ライフスタイルアソートメント」といいます。

 

では、店舗内の棚をどう編集するか。

ライフスタイルアソートメントの例を2つご紹介します。

 

(例1)書店

チャートを作成し、その診断結果に合わせておすすめの本を処方箋のようにしておすすめするという売り方。

お薬袋に文庫本を入れて並べています。

本との出会いを楽しく、面白く演出。

 

(例2)ホームセンター

富士山の登山ブーム到来に合わせて、地元のホームセンターが「富士登山をするならこれが必要」というチェックリストのポップを作成。合わせて、持ち帰りできるA4サイズのリストも配布。

お客様にも親切であり、お店としても売り上げが上がるグッドアイデア

 

最近は、これまでの仕切りを取っ払って、何か楽しい売り方ができないかという試みを取り入れているお店が増えています。今、その商品がある場所は本当にそこでいいのか?という視点を持つだけでも、いろんな改善策が見えることをご提案いただきました。

何から取り掛かるか?〜良い雰囲気を作る接客〜

「ここまでいろいろなことをお伝えしましたが、まずはお金のかからないところからやってみてはどうでしょうか?」と橋本氏。

 

まずは良い雰囲気を作る接客。

今の時代、人との接点が少なくなっているからこそ、人から物を買う行為に癒されたり、ホッとしたりということがあると思います。

 

そして、あいさつや電話応対、道案内、予約の取り方など、新規のお客様に与える第一印象も、少しの心がけで良くすることができます。

 

特に予約の取り方については、日時、人数が先になっていないか。いきなり日時、人数などの要件確認ではなく、まずは予約をくださったことへの感謝を伝えることが大切だといいます。

 

 

・物的な接点も見逃せない

パンフレットやホームページ、店前の印象も肝心です。

例えば休業案内など、こちらの写真のように店前に書いておくとお客様も把握でき、次の来店にも繋がります。

今の時期は特に、いつ営業しているのか休業しているのかが分からないということのないように、伝えることが重要。

 

価格の工夫や、効果的な販促計画

提供方法の一つとして、「価格」の工夫も挙げられます。

 

・店内商品を同一価格で分かりやすくする

・引き算・割り算にする

唐揚げ1個36円→唐揚げ5個180円(1個あたり36円」

・ワンモアコーヒー

購買した日のみ、同じサイズを150円でもう1杯お代わりできる

・愛顧心に訴える 先得、早割に相当

美容院で帰るときに次回の予約をすると10%オフ

・敷居を低くして、継続を重視

初回半額

・最後の商品まで定価で売る方法

 

また、効果的な販促年間計画でお客様が店に行く理由をつくるという方法もあります。

 

・何曜日に何を売るかを予告

・パンの焼き上がり時間帯(写真参照) 

 ・お客様の誕生日にサービスというのはありますが、あえて店長の誕生日にお裾分けサービスをするというアイデア

 ・今いるお客さんの単価を上げる。替え玉やトッピングしたくなる仕掛け

 

お客様が次に必要とするものを頼みやすくする仕組みを用意することの大切さを強調されました。

  

ポストコロナを考えた店づくりを

ウィズコロナの時代に、お客様をどう拡大していくか。

 

販売・提供方法も多様化しているので、何か一つ強みがあれば、世の中の変化に合わせていくらでも展開だといいます。

例えば、来客前のお客様とも接点をもつためにSNSを活用するなど、新しい機能を考える必要はありますが、強みを変化させてお金に変えることは十分に可能です。

 

「買いやすい、頼みやすい会社・店の構造を確立し、地域の店として確固たる地位を築いていけば、世の中がどうなっていこうと、何があろうと頼られる店として続いていくはずです。何か、今回の私のお話の中で、皆さんの商売のコアとなる部分、自信を持ってアピールできるものが見つかれば幸いです。それはお客様も待っていることだと思いますので、大切に育てていってください」とメッセージを送っていただきました。

 

良い雰囲気をつくる接客や、新規客への第一印象アップ術、ポップなどの販促アイデアなど、お金をかけずに取り組めるヒントをたくさん教えていただきました。

これからのお店・会社づくりを改めて考えるきっかけをいただいた、そんな実りある時間となったのではないでしょうか。

 

 

講師プロフィール

中小企業診断士 橋本 泉氏

東京生まれ。株式会社和光において紳士服売場、婦人雑貨売場の販売、商品開発、顧客情報管理、新人研修、ディスプレイ担当。退社後、中小企業診断士として登録し、経営コンサルタントとして独立開業。自らの現場経験に基づいた販売促進や人材育成の分野で企業支援を行うとともに、「魅力ある 商品づくり・店づくり」をテーマとした全国各地での講演実績多数。消費者の視点に立ったアドバイスが高い評価を得ている。

過去記事