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先進地視察研修

令和5年度 松山市商業振興対策事業委員会 先進地視察レポート〜...

日時 令和6年2月8日(木)〜10日(土)
場所 長崎県長崎市 JR長崎駅、出島メッセ、浜市商店連合会(浜市商店街振興組合)、新大工町商店街、住吉中園商店街 MAP

新幹線の開業を機に100年に一度の大変革のときを迎える長崎市での視察研修。

後編では、新大工町商店街、住吉中園商店街での視察研修をレポートします。

シーボルトも歩いたまち、新大工町を視察

二日目は、新大工町商店街の視察からスタートしました。

 

長崎と小倉を結んだ長崎街道の玄関口にある新大工町。江戸参府に参加したシーボルトをはじめ平賀源内ら学者、坂本龍馬ら幕末の志士なども歩いた歴史あるエリアです。

新大工町商店街の歴史は古く、諏訪神社の門前市が常設化して明治期に商店街となり、さらに終戦後に公設市場が建てられ、それが発展の礎となりました。

一行は諏訪神社で新大工町商店街振興組合の児島正吾理事長らにご案内いただき、まずは商店街を見学しました。

 

再開発事業で生まれ変わった「新大工町ファンスクエア」

続いて、再開発事業により2022年に開業した「新大工町ファンスクエア」や分譲マンション「ライオンズタワー新大工町」を視察。商業施設をはじめ、ライオンズタワーの棟内モデルルームも見学させていただきました。

 

新大工町商店街振興組合の概要

意見交換会では、まず新大工町商店街振興組合の概要からご説明をいただきました。

 

新大工町商店街振興組合の歴史

 

新大工町商店街は、諏訪神社の門前市として始まって以来、食に特化した商店街としての歴史を刻んできた。

現在の店舗数は160件(テナント、空き店舗含む)、空き店舗数は10、空き店舗率:6.25%。

 

・今回見学した天満市場は大正時代に開場し、現在まで続いている。

・かつては1953年開場の新天満市場、1954年開場の新大工町市場も併せて3つの市場が賑わっていたが、新天満市場は2022年、新大工町市場は2017年に閉場した。

1968927日、振興組合として始動

 

商店街の現状

 

・来客数は昔と比べて減少。

・再開発後、新大工町の住居数は増加している→いかに地元の人を商店街に取り込むか。

・新規店舗の出店へ、組合員加入案内などの強化を続けている。

・他地区での大型店舗出店への対応として→地域のコミュニティや団体、また長崎市との連携を強化し、地域密着型の取り組みを推進

 

具体的な活動事例

 

  • まちゼミ

・年に2回開催(春・秋) 2024年春で19回目

1回目…17店舗(17講座) 18回目…25店舗(32講座)

・組合員の講座だけでなく外部企業講座も実施

 

  • ウクライナ支援事業

長崎市がウクライナ難民受け入れを表明すると同時に、組合から市へ協力の申し入れを行った。

・実施事業/募金活動、雇用受け入れ(組合員の店舗)

・ウクライナ支援がきっかけで、地元の桜馬場中学校から組合に講演の依頼があり、平和活動講演を実施→地域との新たなつながりが生まれるきっかけに

 

  • シーボルト来日200年記念事業(長崎市主催)への協力

 

  • おもてなし馬町地下歩道清掃活動

・長崎くんちの前に、国土交通省と連携を取りながら行っている清掃活動

・外部の企業との合同活動の場合あり

新大工町地区第一種市街地再開発事業

次に、新大工町地区市街地再開発組合の副理事長でもある児島さんより再開発事業についてご説明いただきました。

 

  • 計画概要

・敷地面積:約5,100㎡(北街区:約3,800㎡、南街区:約1,300㎡)

・延べ床面積:約47,500㎡(北街区:約36,300㎡、南街区:11,200㎡)

容積率は約700㎡だが、元々600%だったところ、市から条件付きでボーナスの100%が上乗せされたという経緯がある。現在は緩和されてこの地域の容積率は800%になっている。

・施設概要

北街区:北街区:地上26階(商業施設3層・共同住宅23層)、地下1階(駐車場)、駐車場棟(機械式)

南街区:地上11階(駐車場9層・オフィスは2層と1階の一部)

再開発計画が立ち上がった背景

商店街の核となっていた百貨店・長崎玉屋の閉店が発表された(2014年2月28日閉店)。長崎玉屋単独での建て替えは厳しい状況だったこともあり、行政にも相談の上、再開発の方向で進むことに。当時、長崎玉屋に森ビルが入っていた経緯もあり、森ビル都市計画に話を持って行き、森ビル都市計画がコーディネーターとして参画した経緯がある。

 

  • 事業の経緯

2013年 10月 新大工町地区市街地再開発勉強会 開始

2014年 1月新大工町地区市街地再開発準備組合 設立

2015年 7月 都市計画決定(第1回)

2016年 9月 都市計画変更決定(第2回)

2018年 2月 新大工町地区市街地再開発組合 設立

2019年 3月 権利変換計画認可

     8月 起工式

2020年 12月 南街区オープン

2022年 11月 北街区オープン、グランドオープン

 

10年という短い期間で実現できた理由については、以下が考えられる。

・地権者が最初1718名で、最終的には12名になったが、数が少なかった。

・地権者の中に地元の人が少なかったこと。地権者で地元の人間は23名程度。地元の人は思い入れが強いため反対意見が多かった。準備組合を設立する際に加入率が90%以上で、メンバー10数名のうち1名だけ賛同が得られなかったが、その1名は地元の人だった。

再開発は地権者ファースト。地権者の意見が強い事業のため、その調整はとても難しい

 

  • 都市計画について

都市計画は2回決定している。1回目と2回目の違いは、南街区の駐車場の上に2層オフィスを乗せたことと、北街区の商業施設を14階から13階に変更し、4階をマンションに振り替えたこと。

理由:当エリアは住宅地域としては人気があるが、商業地域としては厳しい状況であったため

 

  • 参加組合員(住居部分取得者)募集について

住居としては人気の高いエリアだったため、マンションデベロッパーに公募したところ、トータルで1718社の応募があり、その中から選出した。

生まれ変わった新大工町

事業の推進体制

 

・新大工町地区市街地再開発組合 総組合員数(参組含む):12

理事長 田中丸 弘子(株式会社佐世保玉屋)

副理事長 児島 正吾(有限会社喜助うどん)

     吉田 鉄矢(穴吹興産株式会社)

 

・参加組合員

北街区の住宅床:大京グループ(大京・穴吹工務店・三菱地所レジデンス・NTT都市開発・JR西日本プロパティーズ)

南街区の駐車場・業務床:JR西日本プロパティーズ

 

・コーディネーター:森ビル都市企画株式会社

・特定業務代行者

代表企業:戸田建設

構成員:株式会社アール・アイ・エー(設計)、株式会社上滝(工事)、株式会社谷川建設(工事)

JVで長崎市の株式会社上滝、株式会社谷川建設が選ばれたが、これは行政から地元企業を要望されたことから

 

施設建築物の運営概要

 

【北街区「新大工町ファンスクエア」13階商業施設】

1階(約415坪):地権者によるスーパー、市場フロア

2階(約500坪):地権者による飲食・物販フロア

3階(約540坪):特定業務代行者 戸田建設JVによる処分責任フロア(特定業務代行制度により、戸田建設JVが処分責任を持つ床)

 

【北街区 分譲マンション「ライオンズタワー新大工町」】

■販売主:大京他JV5

■販売価格等

232戸(全体240戸)、総販売面積17,180㎡(5,200坪)

・住戸規模:50㎡台〜140㎡台

TOP価格:約280万円/坪(150㎡が約1.27億円)

 

【南街区 事務所・駐車場(JR西日本プロパティーズが取得)】

■事務所:約530

1階は40坪、10階・11階は245

 

■駐車場:230

・時間貸、「ライオンズタワー新大工町」の月極駐車場を含む

地元商店街等との共存を目指したまちづくりへの仕掛け

賑わいの創出を目的として、北街区の商店街側の当事業の敷地と市道の歩道部分を活用し、イベントができる広場を整備した。長崎市の容積率のボーナスの条件には、広場を作ることやセットバックすることがあり、それを満たすことによって容積率を上げてもらったという経緯がある。

 

また、この広場は毎年10月に開催される「長崎くんち」で活用する目的もある。

新大工町は、長崎の氏神である諏訪神社のお膝元にあり、踊町である新大工町が奉納する演じ物で山車を引き回す「曳壇尻(ひきだんじり)」が催される。これまでは、この山車を商店街で回すスペースがないため、そのスペースの創出は街の強い思いだった。

この広場の整備・運営には、組合・商店街・自治会、長崎市等の多くの方々や組織としての思いが結実する物であり、街との一体感を大切にした施設づくりを目指している。

コンセプトが、人を、地域を動かす力になる!

再開発事業を通して、児島さんよりメッセージをいただきました。

 

「再開発で一番大事なのはコンセプト。これを言い続けることだと思います。

当事業では、3つの柱(食文化発信・多世代交流型商店街の創造・歴史と文化の伝承」で「長崎を感じ、いつ来ても楽しい発信力のあるまちづくり〜長崎らしさを強調しながら成長しつづけるまち」を再開発のテーマとしています。再開発勉強会のときに決めたこのコンセプトをずっと言い続けて事業を進めてきました。

やはり地権者はいろんな思惑があるために、なかなか一つの方向に向かないけれども、目標・目的というのはコンセプトで感じられるので、コンセプトさえあれば、一緒に進んでいけるのではないかと思います」

 

最後に、参加者からの質問にお答えいただきました。

史跡など名所の多いエリアですが、観光客への対応について

新大工町商店街では地元のお客さんを大切にしてきた背景があるので、そこまで観光に力を入れずにやってきました。

今後周辺の史跡などの観光資源を活用していかに観光客を呼び込むか。あまり観光に特化してしまうと地元のお客さんが離れてしまうので、そのあたりのバランスを考えながら、観光というのはこれから伸び代のある課題として考えていく必要があると思っています。

再開発において、費用面のリスクは?

今は工事費が高騰していますが、その直前ぐらいで契約できたなど、幸運なことが続いたのもあって、リスクは意外とありませんでした。長崎玉屋さんの建物も築50年くらい経っているので、本来そのものの価値はゼロなんですが、再開発をすることで価値を生み出すことができるということもありました。ただ、先が見えない不安というのは地権者さんにとっては大きかったと思います。いつ完成するんだろうというリスクは多少感じていました。でも、再開発を通してある程度余ったお金を商業にも注ぎ込むことができたというところでは、うまくいったほうじゃないかと思います。

駐車場について。住宅の戸数に対して少なく感じます。

駐車場について、南街区の駐車場は230台。北街区の地下駐車場48台で、住宅用タワー駐車場が56台。全体でいうと住宅用駐車場は100台くらいです。住宅は約240戸ですから少なく感じますが、駐車場問題についてはかなり議論しました。適正台数というのが正直わからない中で、結果的に多すぎて困るのと少なすぎて困るのではどちらがいいかと考えたんです。多すぎて困った時に、駐車場って駐車場以外に使いようがないんですよね。だから稼働率が悪くなったら悪いままでどうしようもない。逆に足りないと困った場合は、周辺の駐車場と提携することで何とかなるのではないかという結論に至りました。

再開発に関して、市の取り組み方はどうでしたか?

行政は後方支援なので、基本的には地元の決断次第でした。ですが、やるとなったら全面的にいろんな支援をしてもらいました。ただ、市の方から焚きつけるということは、長崎市の場合はなかったと思います。

また、再開発事業の一番の山場である組合設立のときに、市から加入率を100%にせよという条件があったんです。最終的に100%になったんですが、再開発に好意的でない人はお金だけもらって出ていくという選択肢を取るので、結局その残った人たちだけで100%になって組合を設立したということです。

再開発を正解にするために

「再開発をしない生活とどっちがいいかって言ったら、やってみないとわからないので、今が正解かどうかわかりませんが、今も正解にするために頑張るしかないと思っています。やはり、再開発の勢いが加速した一番の要因は危機感。玉屋さんがなくなるという危機に面したとき、何かやらなきゃいけないよねっていうのが一番の原動力になったのだと思います」という児島さんのお話に、参加者一同深く頷いていました。

 

長崎の玄関口である新大工町の再開発について具体的な事例を聞くことができ、大変実りある研修となりました。

長崎市北部の台所・住吉中園商店街

続いて一行が訪れたのは、住吉中園商店街。

路面電車通を挟んで西側にある住吉商店街(サンモール住吉)と東側の中園商店街(サンモール中園)が、「長崎住吉中園商店街振興組合」を設立し、1979年から運営しています。

 

長崎住吉中園商店街振興組合の園田理事長、草野専務理事、中村事務局長らにご案内いただき、まずは商店街を見学しました。

 

住吉商店街、中園商店街ともに、戦後の復興期に食料品を中心とした商店が集まり、50年以上、市民の台所・長崎の銀座として発展してきました。

アーケードの下には、精肉店や八百屋、鮮魚店、洋品店などが立ち並び、昔ながらの商店街の雰囲気を感じます。

新旧が融合するハイブリッドな商店街

駅周辺で大規模な再開発が進む一方、こうした昔ながらの商店街では利用客の減少や空き店舗の増加などが懸念されています。しかし、アーケードを見学していると、老舗に混じっておしゃれなカフェがあり、若者で賑わっていました。

近年、同商店街では長崎青年会議所の会員とOBらで商店街活性化グループ「JMOP(ジモップ)」を結成し、若手経営者らが活気を取り戻すべく空き店舗対策やイベント事業に取り組んでいるそう。

老舗と新しいお店が融合する、ハイブリッドな商店街としての姿を見ました。

活気あるアーケード商店街のロールモデル

散策の後は、中園商店街にあるレトロなカフェ「ペール・メール」にて、おいしいコーヒーとケーキをいただきながら意見交換会を行いました。

 

まず、長崎住吉中園商店街振興組合の概要、取り組みについてご説明いただきました。

・コロナ禍で状況は本当に厳しくなっている。土地も3分の1くらいになっている。空き地、空き店舗対策が急務

・近隣に複合商業施設・チトセピアが35年前にオープン。その際は商店街のほとんどが反対すると思っていたが、反対がなかった。それより我々商店街がお客さんに満足してもらえる商売をしていこうということで、地域と一体になり頑張ることができた。

・住吉中園商店街振興組合では毎月1日に理事会を実施。いろんな業種が力を合わせ、様々な企画を立案。時にはボーリング大会など親交を深めている。

 

「とにかく国、県、市、それぞれと仲良くすることに努め、いろいろご指導、お力添えをいただきながらまちづくりを進めてきました」と園田理事長。

 

衰退が目立つ地方のあアーケード商店街の中でも、往時の活気を取り戻す勢いの住吉中園商店街。情熱的で人間味ある振興組合のみなさんと、元気な商店主さんが揃う街並みに元気をもらいました。

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