知っているかどうかではなく、できているかどうかの視点で
講演を始めるにあたり、まずお伝えしたい重要なことがあります。
それは「知っているかどうか」の視点ではなく、「今、できているかどうか」の視点で聴くことの大切さ。
情報過多の時代を生きていると、どこかで見たことある、聞いたことあることばかり。
知っているかどうかで聞いていると、知っていると思った途端に安心してしまい、学びの扉が閉じてしまう。大事なのは知っているかどうかではなく、できているかどうか。
ぜひ、「今」できているかどうかの視点で聞いていただきたいと思います。
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コロナ禍における働き方、「VUCA(ブーカ)の時代」と言われています。
VUCAとは
V:Volatility(変動性)
U:Uncertainty(不確実性)
C:Complexity(複雑性)
A:Ambiguity(曖昧性)
その中で、総称して言われているのは不確実性の時代。
先が読めない世の中。コロナ禍になるとも、長引くともわからなかった中で、私たちは生活しています。
コロナ禍において、私たちは感染予防対策、ソーシャルディスタンス、非接触型のオペレーション、リモートワークなどをニューノーマルな働き方として取り組んでいます。
『やり方』も大切 『在り方』はもっと大切
私たちは、うまくいっていない時ほどやり方にこだわってしまう傾向にあります。
うまくいっていない時にやり方を探すのは重要だが、それでもうまくいかないのはなぜか?
それは、やり方を変える前に在り方を見直す必要があるからです。
在り方とは、言い方を変えると本質や、ベースとなる考え方。木でいうと根幹、根っこを指します。
つまり、やり方を変えるだけでなく、本質を見直してからやり方を変えないとうまくいかない。
セミナーや本、YouTubeなどで得たものをそのまま真似してもうまくいかないのは、在り方を見直していないからです。
在り方が根幹なら、やり方は枝葉。
私たちは、目に見えるものに意識がいってしまいます。他の人のやり方に目が行きがちだが、根っこは見えません。
つまり、本質に意識を向けていないと、やり方ばかりに目を向けてしまうのです。
先ほどお話しした感染症対策などニューノーマルな働き方も、全てやり方の一つです。
では、本質とは何か?それは自己管理能力。
私たちに今問われているのは自己管理能力であり、感染予防対策も、個人個人の自己管理能力に委ねられています。
ですから、自己管理能力を見直す必要があるのです。
『やり方』は、時代や環境と共に変えていく必要がある。万能ではないものですが、在り方は変わりません。
コロナ禍でも、落ち着いても変わらない、普遍的なベースとなるものなのです。
だからこそ、『在り方』をもとに、常に『やり方』を創意工夫していくことが大切です。
働く上で知っておきたい大切な在り方
働く語源をご存知ですか?
働く=はた+らく
と言われています。
働くということは、自分の周りにいる人たちに喜んでもらう、楽しんでもらう、笑顔になってもらうというのが語源です。
自分のまわりにいるお客様に喜んでもらうことが働くことですから、そこで自分のことばかり考えて仕事していると辛くなってしまいます。
そんなときは、働く語源を思い出していただきたい。
働くことの矢印を自分に向けるのではなくて、周りに向ける。これが大鉄則です。
一方で、仕事とは、悩み事や困りごとを解消、解決すること。
つまり、私たちは地域の方々の悩み事や困りごとを解決することが仕事になります。
ただ、コロナになる前と後では、人々の悩み事や困り事は変わってきているため、同じことをしていてもいけません。
地域の方々がどんなことに悩み、困っているのかしっかりと耳を傾けて、解決案を提案することが求められています。
世の中の価値観の変化に対応することが、今後生き残れるかに関わってきます。
そこで大切なのは、変化対応力。変えていくものと変えてはいけないものを見極められる能力のことです。
変えていくものはやり方、変えてはいけないものは在り方。
それを見極めて仕事をしていくことが重要となってきます。
普段から意識したい「当事者意識」
自分の周りにいる人を喜ばせたいと考えている人はうまくいきます。
ですが、普段からプライベートも仕事も、周りの人を喜ばせるのは大変ですよね。
そこで、一つ方法があります。
何かお役に立てることはないかな?を口ぐせにすること。
これさえ口ぐせにしていれば、脳が勝手に考えてくれるのです。
そしてみなさんが意識として持たないといけないのは、
会社(組織)が何をしてくれるかではなく、会社(組織)に何ができるか。
お客様(仲間)に何ができるか。
コロナ禍の今、私たちに求められているのは「当事者意識」。
自分だけは大丈夫と思っている人は当事者意識に欠けています。
全てを自分事として考えられる当事者意識を持つこと。それがコロナ禍で問われている本質なのです。
リーダーに求められる役割と期待
リーダーに求められる役割は、シンプルに結果ですよね。
社長も部長も課長も、何かのリーダーに就いている人には、結果が求められます。
結果を求められると、結果の出るやり方を探しがちです。もちろんそれも大事ですが、やり方だけを探してもなかなか結果につながりにくいのです。
そこで、ビクトリーサイクルを知っておいていただきたいと思います。
ES(従業員満足度)→CS(顧客満足度)→Sales(売上・マネジメント)→Profit(利益・コストコントロール)というサイクル。
結果を出すために、この4本柱をコントロールしていくのがリーダーの役目。長年結果を出し続けている企業、組織は、このビクトリーサイクルを意識しています。
この循環を回していくことが、長く組織を安定させていくことにつながります。
ただ、逆サイクルになってしまうとうまくいきませんが、短期的にはOK。逆サイクルがOKなタイミングは繁忙期や忙しい時間です。長期的にはこのサイクルが回っている組織が長続きしていきます。
結果を出すためにリーダーとして必要な在り方は?
次に、結果を出すためにリーダーとして必要なことは何でしょうか?
その本質は、他力を活かすことです。自分の能力だけではなく、仲間の力を活かすこと。つまり、自力と他力のバランスが非常に重要なのです。
そのために、リーダーのみなさんが持ち合わせておかなければいけないのは、リーダーシップとコミュニケーション。
それが生産性向上や離職防止につながっていきます。
リーダーとリーダーシップの違いをよく混在されていますが、リーダーは存在そのもの。リーダーシップは影響力。
つまり、リーダーでもリーダーシップのないリーダーはいます。ですから、リーダーは影響力が重要。
リーダーシップの公式(リーダーの資質)というのがあります。
リーダーシップ = 敬意 × 信頼
ここで注目したいのは掛け算であること。どちらかがゼロだとリーダーシップはゼロになってしまいます。
敬意は、たくさんの知識や経験、高いスキルから生まれ、信頼は、約束を守ること、ハートコンタクトから生まれます。
信頼が生まれるコミュニケーションの在り方
今日のテーマで一番みなさんにお伝えしたいのが「ハートコンタクト」です。
これは、私が作った造語ですが、ぜひハートコンタクトという概念を意識していただきたいと思います。
ハートコンタクトとは、自分の心臓を相手に向けてコミュニケーションをとること。
みなさんはアイコンタクトだけでなくハートコンタクトができていますか?
例えば挨拶をする際、しっかり体をむけているか。ハートを向けた関わり方をしているか。
人は、ハートを向けてくれる上司と働きたいものです。
その積み重ねが信頼関係につながり、リーダーシップにつながっていきます。
また、ハートコンタクトは見えなくても伝わります。
相手に興味、関心を向けるハートコンタクトで、一緒に働いている仲間の不安や悩みに気づくことができるのです。
どの組織でも抱えている課題とは
どの組織でも悩みは人ですよね。今、人で悩んでいない会社、組織はないのではないでしょうか。
それはなぜか?人というのはお金で解決できないからです。
もし人で悩んでいない会社があったとしたら、それは悩んでいないのではなく問題に気づいていないのです。
組織における人に関する悩みは大きく分けて3つあります。
採用・定着・育成。定着は離職防止につながります。
人手不足なので一生懸命採用をしている会社はあると思いますが、最優先事項は定着。これは間違いありません。例え人手不足であったとしても、最優先すべきは定着です。
今、働いている人が辞めない組織づくりをすること。人が辞めない組織を作ってから採用をすることが重要です。
人が辞める理由とは?
人が辞める理由は、大きく分けて2つあります。
①会社や上司に魅力や誇りを感じなくなったから
②会社・上司から必要とされていないと感じたから
従業員のみなさんは不安を持ちながら働いている。この2つが満たされなかったら、不安はどんどん増殖していきます。
人は、必要とされているところで働きたいのです。
あなたが必要だということを、ちゃんと言葉にして伝えていますか?
そして、離職防止のためには、従業員のモチベーションが落ちないようにすることが重要です。
モチベーションダウンの3つの要因は主に3つ。
①人間関係(コミュニケーション)
②承認欲求(評価されない)
③労働環境(社風・労働時間)
これを気をつけていても社員が辞めてしまう場合、モチベーション低下の要因がどこかにあります。
モチベーションが下がる本質とは、上司や先輩からの無意識に発せられた何気ない一言や無意識に見せた表情です。
意識しているときはいい表情、いい声かけができるが、ふと気を抜いた瞬間の行動で部下のモチベーションは下がる。ですから、無意識の領域を変えるしかないのです。
ハラスメントの要因も全く一緒で、無意識の時に言った一言や行動が引き金となっています。
無意識の行動を意識化しない限り、職場のモチベーションは変わりません。
やはり、当事者意識を持って自覚することが重要なのです。
雰囲気の良い職場 3つのポイント
人が定着する職場は、雰囲気が良いことが前提ですよね。
そのポイントは以下の3点です。
①感謝 ⇄ 不平不満
②笑顔 ⇄ 不機嫌
③声かけ ⇄ あら探し
雰囲気の良い職場の3つのポイントは、どれも意識している時にはできていることではないでしょうか。
でも、ふと気を抜いた時に出てくるのが反対のこと。無意識に、不平不満、不機嫌、あら探しをしていませんか?
リーダーの顔色を伺いながら仕事することほど生産性の低いことはありません。
人は欠けているところに目がいく、認知不協和という人間の特性があります。
働いていると、つい部下のできていない行動に目がいってしまいがちです。
無意識な行動が部下のモチベーションを下げていることを自覚しない限り、職場の雰囲気は変わりません。
無意識な行動への対策
無意識な行動が職場の雰囲気を左右する。その本質に気づいたら、あとやり方を工夫するだけです。
ここでいくつか対策をお伝えします。
①デイリーフィードバック
お疲れ様+一言
一緒に働いている仲間に対して、お疲れ様と言った時に、一言でいいからその日の仕事について触れるのです。
これをルール化することで、自然と仲間のいいところ探しができるようになります。
無意識だと欠けているところに目がいきがちですが、一言添えることを考えていると、いいところに目がいくようになります。
とはいえ、突然声かけするのは難しい…、声かけが苦手という人は、一番簡単な声かけ「やっていること+ありがとう」から始めましょう。
例えば、コピーをとってくれてありがとう。
あえてやっている姿を言葉にしてありがとうを添えるだけ。これが一番簡単な声かけなので、ぜひやっていただきたいと思います。
②○◎の法則
相手が意識を受け取りやすい関わり方です。
人は無意識に自分を正当化するために相手を否定する傾向にあります。ですが、相手を否定するのではなく、まず「それもいいね」と相手を承認し、「もっといいかもよ」と提案する。すると、相手も受け取ってくれるようになります。
相手にいきなりバツをつけると、相手もこちらの言うことを受け取ってくれません。×◎ではなく○◎。まずは相手に○をつけてあげることが大切です。
自立型人材育成の秘訣
人材育成の基本は自分育成(自己管理能力)。
究極の本質は、部下に成長してもらいたかったら、自分が成長する姿を見せることです。
「人は変えられない。変えられるのは自分だ。」
という言葉を聞いたことがあると思います。でも、すぐに部下のことを変えようとしていませんか?
育てることは、相手を変えるのではなく、自分が変わることから始まります。
これは、マクドナルドの創始者、レイ・クロックの言葉です。
As lons as you’re green,You are growing.
(未熟である限りは、成長している)
As soon as you’re ripe,You start to rot.
成熟した瞬間、腐敗が始まる
自身が完璧だと思ってしまったら、部下が成長しない。
私たちも成長しますという意識で関わってくことが大事なんだということを教えてくれています。
トレーナーとコーチの違い
トレーナーとコーチの違いを理解した上で人材育成に臨むことが大切です。
●トレーナーの語源はトレイン。
決められたことを決められた通りに教えるのがトレーナーの役目です。
●コーチの語源は馬車。
線路のないところを走る馬車は、馬の自主性を重んじながら、大幅にそれた時だけ修正します。
手本を示すことが大事だが、相手に合わせて変えていくことが重要なのです。
これは、人材育成にも当てはまります。
新人なら、決められたことを決められた通りに教えるトレーナーとしての指導が適していますし、ある程度になれば、コーチとしての関わり方が望ましい。
相手に合わせて関わり方を変えていくのが人材育成です。
モチベーションの本質
モチベーションの本質は自分が源。
仕事が大変か楽しいか、全ては自分のとらえ方次第なのです。
例えば、なぜディズニーランドは楽しいのか?
それは、行く前から楽しむと決めているからです。
人は、何か行動をする前に、どうなりたいかを無意識に決めています。
楽しいを分析すると…
実は、「楽しい」には「思い通りに行かないこと」が含まれています。
例えばゲームやゴルフやボウリングなどは、思い通りに行かないからこそ楽しい。
「思い通りにいかない」ときは、「楽しい」の前兆です。
なのに、仕事になった瞬間、思い通りにいかないことが大変になっていませんか?
思い通りにいかないことの先に楽しさや達成感が待っています。
それをぜひ従業員のみなさんにも伝えていただきたいのです。
「楽しい」と、あり得ない集中力と持続力を発揮します。
だから「楽しい」を取り入れましょう。
知っていることは、行動に移すことができる。
うまくいっている人とそうでない人の決定的な違い。
それは能力の差より行動の差、行動の差より継続の差。
聞いて終わりではなく、行動に起こし、それを継続することで差がつきます。
そう講演を締めくくっていただいた中村氏。
知っていても、できていないことは結構多いものです。
ただ、できていないことは、これから行動に移すことができる。今回中村氏から教えていただいたことは、どれもすぐに取り組めるものばかり。
Let’s Action!
中村氏に大きく背中を押してもらえたような、そんな時間でした。
講師プロフィール
株式会社 Gentle 代表取締役 中村 成博氏
日本マクドナルド勤務時代、楽しく働ける環境づくりを徹底し、都内で平均時給が一番低い店舗にも関わらず一番離職率の低い店舗を実現。自らが考案した従業員のモチベーションアップを図るマネジメント手法は、マクドナルド全店に紹介された実績を持つ。コンサルティング会社では、この考え・手法をあらゆる業種・業態に講演・研修を通して広め、その実効性は評価が高い。2015年10月(株)Gentle設立。セミナー・研修等における熱い語り口と取り組み実績は、多くの方々の支持と共感を得ている。