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先進地視察研修

令和4年度 先進地視察研修レポート〜後編〜

日時 令和4年11月7日(月)・8日(火)
場所 広島県広島市中区本通ほか MAP

3年ぶりの実施となった松山市商業振興対策事業委員会主催の商店街視察・研修。

今回は、松山市駅前商店街会、松山大街道商店街振興組合、松山銀天街商店街振興組合、花園町西通り商店街振興組合、松山ロープウェイ中央商店街振興組合の方々と松山市地域経済課、松山商工会議所からあわせて10名が参加しました。

視察研修地は、広島県廿日市市の宮島口商店街と廿日市駅通り商店会、広島市の広島市中央部商店街振興組合連合会とうらぶくろ商店街。

後編では、広島市を訪れた二日目を振り返ります。

広島市中心部、賑わう商店街を視察

二日目は、まず午前中に広島市中央部商店街振興組合連合会(中振連)をたずねました。

中振連は、広島市中心部にある商店街、大型店が加盟する、超広域型の商店街です。

 

加盟商店街:本通、金座街、胡町、中央通、並木通り、中の棚、流川銀座、堀川町本通、東胡町、うらぶくろ(10商店街、約620店舗)

 

加盟大型店:福屋、三越、そごう、東急ハンズ、パルコ、アクア広島センター街、パセーラ(クレド)、シャレオ(地下街)、サンモール(9大型店)

 

当日は、キーパーソンである5名の方が迎えてくださいました。

広島市中央部商店街振興組合連合会 理事長

広島本通商店街振興組合 理事長

小川嘉彦氏

 

NPO法人セトラひろしま 代表

広島市中央部商店街振興組合連合会 専務理事

広島金座街商店街振興組合 副理事長

広島シティカード協同組合 専務理事

若狭利康氏

 

広島市中央部商店街振興組合連合会 事務局長

並木通り商店街振興組合 事務局長

NPO法人セトラひろしま 副理事長

石丸良道氏

 

広島市中の棚商店街振興組合 事務局長

グランドパーキング21 管理責任者

尾﨑頼寿氏

 

山水興産株式会社 代表取締役

山崎弘志氏

 

中心部の駐車場問題をきっかけに、中振連が発足

中振連は、1992年に発足しました。当時、中心部は深刻な駐車場不足で、駐車場を利用するために長蛇の自動車の列ができる状態。そんなとき、広島市西区にある商工センターに「アルパーク」という大型商業施設ができるという話が。そこは無料駐車場も完備しているということに一層の危機感を持った商店街の面々は、1991年に「広島市中央部駐車場システム」の運営を開始し、共通無料駐車券発行事業をスタート。その運営母体として、中振連と青年部会が発足したのです。2000年には駐車券の精算業務を担う「広島シティカード」の運営を開始しました。

 

中振連の主な事業

 

中振連では、発足以降、活性化のため様々な取り組みを実施しています。

  • 環境整備

・広島市中央部駐車場システム(無料駐車券発行事業)

・都心交通対策実行委員会

・アリスガーデン検討委員会

 

  • 賑わい創出

・ゆかたできん祭(6月)

・とうろう流し(86日 原爆記念日の夜)

・えべっさん(11月 胡子大祭支援)

・ドリミネーション(11月〜1月、ライトアップ)

・アリスガーデン受付業務 など

 

  • インバウンド事業

wi-fi網の拡充

・買い物ガイド、フリーペーパーの発行、商店街おもてなしタウンガイド活動

 

  • 子育て支援

・ベビーカー無料貸出サービス

・こども広場(担当:NPO法人セトラひろしま)

NPO法人セトラひろしまとは?

市民と商店街が連携した街づくりのための市民団体として2002年に「セトラひろしま」が発足。広島市中心部地域(センターエリア=セトラ)の魅力的な賑わいの創出と活性化を目指し、市民・生活者の知恵や人材を積極的に取り入れながら「中心部から広島を元気に!」を合言葉に幅広い活動を展開。商店街だけでは成し得ない「文化・アート・にぎわい作り・環境整備」に貢献しています。

 

行政・商店街・市民を結ぶ「繋ぎ役」

 

ボランティア活動もありますが、セトラひろしまは、主に事業を受託して報酬を得る「事業推進型」のNPOです。イベント、アート、ガーデニングなど各事業の専門家が集まった「寄り合い所帯」=「プラットフォーム」であり行政・商店街・市民を結ぶ繋ぎ役でもあります。

 

セトラひろしまの主な事業・活動

 

  • まちなか賑わいプロジェクト

・アリスガーデンパフォーマンス広場事業 AH!2022年で200回達成!)

Akari Matsuri

・大イノコ祭り

・えんこうさん など

 

  • 地域環境プロジェクト

・袋町公園美化活動

・おそうじ隊(ゆかたできん祭、えべっさん)

 

  • グリーンプロジェクト

・アリスガーデンと並木通りの緑化維持管理

・ソーシャルガーデナー倶楽部(袋町小学校、平和大通り、植栽維持管理)

 

  • 文化交流プロジェクト

・広島文化会議「明日の広場」

・平和大通り「芸術展」ARTery

・慰霊のための音楽奉献 など他多数

 

  • 子育て環境づくりプロジェクト

冒険遊び場「もとまち自遊ひろば」

 

エリアマネージメントへの流れ

中心部では、「カミハチキテル」と「並木コンソーシアム」という二つのエリマネが動いています。

 

カミハチキテル

 

「紙屋町・基町にぎわいづくり協議会」と「中振連」が手を組み2017年に勉強会を始め、2018年の「全国エリマネシンポジウム」の広島開催を機に「紙屋町・八丁堀エリアマネジメント実践勉強会」を開始。広島県・広島市も参加し、事務局もできて組織化したのが「カミハチキテル」です。名称は、紙屋町と八丁堀がキテるという意味を込めた造語。

相生通りを中心とした地域のビジョンづくりを進め、「車中心からウォーカブルな人中心の空間実現」に目標を設定し、取り組んでいます。

国土交通省の進める「官民連携まちなか再生推進事業」の補助金制度に採択され、2020年に相生通りのバスベイにウッドデッキを敷き、憩いの空間を創出した社会実験「#カミハチキテル」を実施。グッドデザイン賞を受賞し、高い評価を得ました。

2021年には基町クレド広場にて「#カミハチキテル2」を、2022年には三越前にて「#カミハチキテル3」を実施。現在はビジョンのブラッシュアップと都市再生推進法人への法人化を進めています。

 

並木コンソーシアム

 

一番若く、道路整備を計画している商店街「うらぶくろ」、誕生から34年を迎え再整備が必要となった「並木通り」、そして27年目のアリスガーデンの再整備を計画する「アリスガーデン事業化検討委員会」の3者が集まり、地域全体で新たなビジョンを策定し、まちなかに憩いと賑わいの空間を創出するために2019年に結成されたエリマネ団体です。

2020年に国土交通省の「エリアプラットフォーム活動支援事業」に採択され、ビジョンづくりを進める一方、並木通りでの一方通行実験やパルコの公開空地を活用した社会実験を計画しています。

今後の課題と方向性

・郊外店の台頭に高齢化、後継者不足、そこにコロナの追い打ちに遭い、小さな商店街では商店街を運営する人材が激減。ただ、団塊ジュニアたちが成長してきており、彼らにうまくバトンタッチすることが現在の課題。

 

・広島市中心部ではエリマネ組織と連携して街づくりをしていく必要がある。エリマネとどう連携していくか、将来的に合体できるかが課題。現状、中振連の資金源はその多くが駐車場システムだが、年々売り上げが落ち込んでおり、別の資金源も考えないといけない時期にきている。

 

・イベントに関しては、コロナによりたくさんの人を集めてシャワー効果というのが通用しなくなりつつある。そのため、日常を大切にして、域内、また広島駅周辺との回遊性を高めることが、今後の生き残りの鍵となる。

 

最後に、質疑応答の時間が設けられ、参加者から駐車場・駐輪場の問題やイベントの運営に関しての質問が寄せられました。

 

研修の後は、昼食会場に向かいながら、中心部を見学。10もの商店街がひしめき合う街はそれぞれに特色があり、皆さん写真を撮影したり、店前にある看板やメニューをチェックしたりと、興味深く散策されていました。

裏通りの活性化に挑む「うらぶくろ商店街」

昼食休憩を挟み、続いて一行が訪れたのは中振連の「うらぶくろ商店街」。最も若く、活発な取り組みが行われている商店街です。

 

こちらでは、うらぶくろ商店街振興組合の理事長・松本峰人さんと、副理事長・奥原誠次郎さんに、商店街をご案内いただきました。

 

袋町地区の東西2本の通りから成るうらぶくろ商店街。

街には隠れた名店やおしゃれなセレクトショップ、飲食店などが点在し、本通り商店街に対して裏路地的な位置付けとして根強い支持を得ている街区です。

 

本通り商店街の1日の通行量が約6万人なのに対し、うらぶくろ商店街は1割以下という調査結果に危機感を抱いた面々は、「裏通り」を魅力あふれる通りとし、賑わいを呼び込もうと2007年に袋町「裏通り」活性化委員会(準備会)、翌年7月に袋町「裏通り」

活性化委員会が発足、2010年にうらぶくろ商店街振興組合を設立しました。

 

うらぶくろのまちづくり

「自活自営」をテーマに、裏通りの活性化に取り組んでいるうらぶくろ商店街。組合負担金は商店街の名前にかけて月に296円のみ。道路や公園などの公共空間をできるだけ活用し、人が回遊する商店街を観点にまちづくりを進めています。

 

道路整備の遅れを取り戻し、公共空間として活用

 

現在、一大プロジェクトとして動いているのが道路のリニューアル計画。

中心市街地にある他の商店街と比較しても、道路整備や電線地中化などのハード整備に遅れをとっており、歩道の整備が進んでいないことも歩行者の歩きづらさ、車両の暴走を招く結果になっていました。

 

そこで、「歩行者と自動車が共存した歩きやすい通り」「袋町裏通りらしさが演出できる通り」を目指すべき姿として、袋町裏通りリニューアル計画が立ち上がったのです。

 

現状

道幅8mのうち、車道が6.5m、歩道が1.5m

リニューアル案

道幅8mのうち、車道は3m、両側に2mの歩道と1.5mの路側帯、さらに歩道と車道の間に1.5mの「アクティビティが生まれる空間」をつくる

 

1.5mのアクティビティ空間には、店の軒先として利用したり、ベンチや宣伝物を置いたり、樹木を植えたりと様々な活用を予定しています。

こういった新しいデザインの道路の提案がようやく採択され、実現に向けて動き出しました。3年後には改装し、電柱も地中化してユニークな道路に生まれ変わる予定です。

アクティビティ空間で、街を魅力化

1.5mのアクティビティ空間は、東西の通りの全体に設けるのではなく、自動車の速度を抑制する効果や駐停車の問題なども考慮した上で数箇所に設ける予定としています。

現在は、道路説明会などを開き、商店街の組合員の同意を得た上で、アクティビティ空間の設置を進めている状況です。

 

奥原副理事長

「幅1.5mほどの空間で、どう地元を魅力化できるか。新しい道路の使い方、魅力のつくり方を模索し、これを起点に国土交通省が進める地域特性を活かしたまちづくりや基盤整備、沿道の建て替え促進などを誘発していきたい」

人気イベントに成長「ザ・トランクマーケット」

続いて、質疑応答が行われました。参加者からの質問に対し、奥原副理事長にお答えいただきました。

 

まずは、ザ・トランクマーケットについて。

「ザ・トランクマーケット」は、うらぶくろのシンボルともいえる袋町公園で年に2回開催される蚤の市。事務局メンバーは商店街と外部の専門的なボランティアスタッフの人たちで、元々のコミュニティーの延長線上で実現したイベントです。

5回目までは赤字でしたが、6回目以降は黒字をキープしています。出店料は1件あたり2日間で3万円。だいたい70店舗が集まるので、運営資金は210万円。この資源で自活自営をしながら、スタッフの費用を創出できるように、組合のための事業としてイベントに必要な家具のレンタルも始めました。

まちづくり会社 COMPASS・マチカグとは?

COMPASSは、エリマネの「並木コンソーシアム」と連携したまちづくり会社です。まちづくりやエリアマネジメント業務を行い、「都市再生推進法人」を目指しています。

先ほどご紹介した家具のレンタル事業も、「マチカグ」というサービスとしてこの会社で行っています。

マチカグは、イベント用のテントやテーブル・イス・照明器具などの什器をレンタル・販売するプラットフォーム。地域活性イベント開催の敷居を下げ、地域の活性化に寄与することを目的としています。持続的に活動を行うには、循環材料が必要。今はマチカグを含め、そのための整備を進めているところです。

地元の商業者との関係性は?

地元の商業者の人と密接な関係性が築けているかというと、まだそうではないかもしれませんが、私自身としては、やはり会費をいただいて、「じゃあ何をしてくれるの?」という関係性をつくっていかないといけないと思っています。ただ、人と人とのつながりとか、近年面倒臭いとされていたことが豊かさに変わりつつあるなかで、まちづくりを通して振興組合と仲良くすることができ、コミュニティができたことは事実です。

 

松本理事長

「一緒に酒を飲んだり、議論を交わしたりして、だんだん仲良くなっていった感覚です。この街は個人事業主が多いので、つい自分のことだけになりがちでしたが、やはり街全体で考えて行けたらいいなということに改めて気付かされました。ですから、こういった活動をして良かったなと思っています」

 

活発な意見交換で盛り上がった視察研修。

「これを機に、情報を交換し、交流を深めていただけたらなと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします」と奥原副理事長。うらぶくろ商店街で生まれたご縁は、今後も続いていくことでしょう。

 

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