長崎の中心商店街「浜んまち」へ
出島メッセ長崎を後にした一行は、バスでJR長崎駅周辺を視察。移転した県庁や建設中のスタジアムシティなどを車窓から見学し、長崎市の中心商店街である浜市商店街へ向かいました。
長崎市の中心市街地は「浜んまち」と呼ばれ、複数の商店街で形成されています。
街は2月9日から始まる長崎ランタンフェスティバルのランタン(中国提灯)やオブジェで彩られ、早くもお祭りムードが漂い始めていました。
こちらでは意見交換会が行われ、浜市商店連合会(長崎浜市商店街振興組合)会長の三山格さん、専務理事の石丸忠直さん、理事・まちづくり活性化委員長の本田時夫さん(長崎浜んまち商店街振興組合連合会理事長・浜んまち6商会会長)、販促企画委員長の山崎晃裕さん、事務局の方々、また、オブザーバーとして長崎市まちなか事業推進室の方がご参加くださいました。
120年超えの歴史を刻む浜市商店連合会
まず、「浜んまち」の概要についてご説明いただきました。
浜市商店連合会が発足したのは明治35年(1902)。商店主の組合として設立。その後、アーケードの建設を機に、昭和54年4月に長崎浜市商店街振興組合を組織したという背景がある。
「浜んまち」には浜市商店連合会(長崎浜市商店街振興組合)(以下、浜市)を含め隣接する6つの商店街があり、これを浜んまち6商会(以下、6商会)と称して、一つの組織として情報交換や共同作業を行っている。6商会で包括決済事業などを実施する際に法人化が必要ということから、浜んまち商店街振興組合連合会(以下、浜振連)を別途立ち上げている。
さらに、もう一つ外側の街区を含めた12商店街から成る中央地区で長崎中央地区商店街連合会(以下、中央地区)という組織を構成。
中央地区12商店街が共同で行う共通駐車券事業
中央地区は発足して36年経つが、時を同じくしてスタートしたのが共通駐車券事業。
浜んまち全体の駐車場不足を解消するために始まった事業で、街内の駐車場と加盟商店がタイアップをして共通駐車券を発行している。また、インターネットで各駐車場の満車空車情報も発信。
近年では大型店舗が抜けたり駐車券の発券枚数が減ったりとネガティブな状況が出ているが、現在のところは来街者のニーズもありなんとか継続できているとのこと。
浜んまち商店街振興組合連合会は包括決済事業の要
クレジットカードや電子マネーの包括決済事業を立ち上げる際に結成した浜振連では、包括決済事業の実質的な運営マネジメント、委託事業も含めて行っている。
また現在は、免税カウンターの一括処理や、プレミアム商品券に関しても、令和4年度「長崎市商店街等にぎわい復活支援事業費補助金」を活用し、6商会と百貨店の7団体一括して発行している。プレミアム商品券としては長崎市初の試みとして電子商品券の発売に挑戦。
本田さん
「コロナ禍で外国人観光客が激減したこともあり、非常に売り上げが減少した経緯もありますが、今後インバウンドの再来、またランタンフェスティバルなどでまた少し上向きになっていくのではないかと期待しています」
“思い”がある人たちとタッグを組み、街を“遊び場”に
浜市の企画販促を行う委員会は、委員長の山崎さんをはじめ青年会のメンバーが中心となって活動している。
山崎さん
「後継者不足でなかなかメンバーが集まらない状況に直面。また、限られた予算、本業をやりながら自前での企画には限界がありました。そこで、街に思いのある人たちとタッグを組んで、街を遊び場にしてもらおうというアイデアにたどりついたんです」
子どもたちへの思いを持ったNPO法人REDI for kidsとの協働事業としてキッズハロウィンパーティーを実施したり、長崎県eスポーツ連合との協働事業としてeスポーツイベントを企画したり。街で子どもたちが楽しく学べる環境づくりにも注力。
全てを自前でやろうとするのではなく、各種団体などと協働し、それぞれの特技、特色を生かしてもらうという方向性でイベントを企画している。
浜市商店連合会の近年の取り組み
令和3年度から浜町青年会で実施している音楽イベント。事業規模の拡大に伴い連合会企画へ移行。令和4年度に長崎市まちぶらプロジェクトに認定。
浜んまちの交差点で、基本的に長崎市在住のアマチュアミュージシャンに歌ってもらうイベントとしてスタート。
山崎さん
「ミュージッククロスをきっかけに浜町での楽しい記憶を思い出してほしい。また若手ミュージシャンがライブ経験を積む場所として、『ここで育ててもらった』という聖地になれたらという思いを持ち活動に取り組んでいます」
・一般社団法人ひとり親家庭福祉会ながさきとの共同取り組み
・毎月第3土曜日に計8回実施(8月〜3月)
浜町地区の再開発について
浜市商店連合会としての現在の店舗数は138、会員が79、非会員が39。空き店舗が上層階まで含めて20店舗。
三山さん
「浜町地区の再開発の話が持ち上がったのは、今から約9年前のこと。商店街としての歴史が古く、各商店が木造からコンクリート造に変わった時期も早かったため、老朽化したビルが林立している状況でした。このままいくと個別に建て替えの必要が出てきてしまい、非常に効率の悪いエリアになってしまうことを危惧し、建物の更新をうまくやっていく方法はないだろうかということで再開発の計画が立ち上がりました」
【浜町地区の課題】
- 課題1/商業サービス機能が低下している
- 課題2/商店街が続いていくか不安がある
- 課題3/商店街を支える基礎施設が不十分である
そこで、浜町地区の将来像として、
長崎の「歴史・文化」と「革新」が織りなす、「賑わい」が交差するまち
というコンセプトで、もう一度まちをつくり直そうということで再開発計画を立案。
古い商店街や古い街は、どこかで更新をしていかないと、次の新しいことができなくなる。
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新しい場所よりもさらに深刻な再開発に対する欲求がある。これをどう進めていくかは、頭を悩ませている問題。
最後に、参加者からの質問にお答えいただきました。
JR長崎駅のアミュプラザ新館ができたことのインパクトは?
回答:商店街
2023年11月にオープンして、今の所想定していたほどガーっと来ているわけではない。ただ、オープン当初の人の動きもあるし、歳末商戦、お正月商戦などひとしきり終わったところで見ると、予想したほど大きくは落ちていません。
いずれにしても長崎の場合は商業床が過剰になっています。さらに来年にはジャパネットさんの新しい施設もできたとき、本当に全ての商業者、商業施設がよかったねとなるのか。昨年は100年に一度の大変革の年だと言われていましたが、今度は100年に一度の商業の変化の年という。その結果が恐らくこの一年くらいで明確に出てくるのではないかと思っています。
そのときに我々商店街がどうするか。正直、新興大型商業施設などに対抗して新しいことをするのはお金の力、企画力も含めなかなか難しい。むしろ今まである資産をどうやって磨くかという、昔からある歴史・文化を含めた新しい商店街の魅力として、古いものをどう発信していくかが重要になってきます。
この界隈には100年以上続くお店がたくさんありますので、その魅力とか。新しい商業施設には持ち得ないものを発信していくようなことをやらないと。そういう意味では長崎市さんが「まちぶらプロジェクト(まちなか活性化計画)」などをやっていただいて、いろんな新しい企画に関しては、長崎市さんが応援しますという認定をいただいて進めていますが、そこをもっと強化し、磨いていかないといけない。
人口が減りオーバーストアになっている中で、観光需要を取り組む対策は?
回答:商店街
20年ほど前、長崎に新幹線がほぼ来るとなり、長崎駅の再開発が始まるときに、当時の市長から「観光の商店街に変わってください」と言われたんです。
行政の長がそうやって言うこと自体はすごくインパクトがあったのですが、正直その頃はまだピンときてない状態でした。実感が生まれたのは国際観光船が来るようになってからです。長崎の場合は先行して上海航路が開設されて、その頃から外国人観光客が来ることに対して何をしなきゃいけないのか。例えば、クレジットカード決済事業やろうという具体的な事業の発想になっていきました。
行政は商店街にどう関わっているか?
回答:長崎市
やはり商店街も行政も一緒になって何ができるかということをタイアップして一緒にやっていかないといけないというふうに思っています。
長崎駅の開発が進み、新幹線が開業してスタジアムシティのオープンも控えている今、このお客さんをどうやって浜んまちに誘導するかが、今私たちが抱えている一番の課題です。それを解決するためにまちづくり構想をつくり、今パブリックコメントを行っています。都市構造的に、街中に来やすい動線づくりや、来たときに楽しめるような、いつも賑わっている空間を浜んまちにつくりたいということでまちブラプロジェクトの認定という形で様々なイベンターの方を増やしているという状況です。そして、イベンターの方たちがいつも自由に活動しやすいような環境をどうつくっていくかっていうのが、これからの課題だと考えています。
また、市役所の建て替えがあったとき、駅の方に移転する案も出ましたが、やはり駅にお客さんが来て、その方たちが市役所に行って街中に立ち寄るという動線づくりが大事だということで、少し街中に近いところに移転しました。
再開発に関しても、今は都市計画課の方が重点的に入っていますが、動き出した際には私達もバックアップできるような体制を常に持っています。やはり私達は街中あってこその長崎市と思っています。街中に数多く残る歴史の遺産を活用しつつ、駅、スタジアムシティなど新たなまちづくりを進めていきながら、市全体として活力あるまちをつくっていくということで動いていきたいと思っています。
百貨店の存在感は?
百貨店は、現在は長崎浜屋(浜屋百貨店)だけになりました。元々浜屋百貨店も設立当時から地元のいろんな人が出資をするなどかなり先進的な発想の中で生まれたのですが、やっぱりご多分に漏れず、百貨店という事業形態そのものが今後どうなるのか。あれだけの大きな売り場がいるのか、業態変革が本当にできるのか、いろんな問題を抱えています。
もちろんその問題があるとしても、今の浜町で百貨店の存在は一番大きなものです。歴史的に浜屋さんとは非常にいい関係をずっと続けています。昔から販促事業も常に一緒にやってきて、浜んまちが一つの商業施設とすると、やはり浜屋さんはキーテナント。街のシンボルなんです。
ですから再開発計画を進めるにしても、まず浜屋さんに「町に残ってくれますよね」という話をした上でのこと。引き続き浜町に浜屋があるということに対する担保を取るための努力はずっと続けていきます。
外国人観光客への対策について
免税と決済事業に関しては、やはり観光客に重きを置いて取り組んでいます。
カード決済事業や、免税カウンターを浜屋さんに置き、一緒に入れさせていただいています。外国人観光客向けに各国語のマップをつくるなどもしています。
最初に上海航路ができたときは、大型バスをここにも誘致しようということで、青空駐車場を貸し切って中国人の通訳を呼んで案内することもしました。ちなみに、クルーズ船の乗場から商店街までは1.5〜2kmくらい。
石丸さん
「うちの店は長崎のジモノを扱っているのですが、結構間口を大きく取ったお店でフラッと入りやすいような雰囲気を出していることもあって、大型のクルーズ船が入港したときなどフラッと外国人の方が来られます。結構フリータイムがあるようなスケジュールですと、欧米系のシニアの方なんかは、街歩きをゆったりされるんです」
100年に一度の商業の変化の年に
本田さん
「他所から来た人は、ご飯食べよう、お酒飲もうとなったら、地元の人に聞いてみたいというのがありますよね。それをどうやって育てていくかっていうのは、商店街のそれぞれのなりわいの力だと思うんですよ。
それが我々の底力だと思いますし、そういうお店が増えると、おのずと観光客が来てもいい街だなって言っていただけるんじゃないかと思います」
活発な意見交換で盛り上がった視察研修の後は、商店街の皆さんのご案内のもと、商店街を散策。
文房具や画材、ライフスタイル雑貨に加え、長崎のイイモノを集めたマルシェを併設する石丸さんのお店「石丸文行堂」や、老舗和洋菓子店である本田さんのお店「梅月堂」など、浜市のお店でお買い物を楽しみました。