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先進地視察研修

平成29年度 先進地視察研修レポート~中編~

日時 平成29年10月29日(日)・30日(月)
場所 香川県高松市 高松丸亀町商店街 MAP

今年も松山市商業振興対策事業委員会主催の商店街視察・研修が行われ、市駅前商店街会や松山銀天街第一商店街振興組合など8商店街の方と松山市地域経済課、松山商工会議所から、あわせて18名が参加しました。

 

視察研修地は、高知県の高知市中心商店街、香川県高松市の高松丸亀町商店街、そして平成27年10月にオープンした「瓦町FLAG」。

 

二日目は、まず香川県高松市の高松丸亀町商店街を訪ねました。

商店街の再生~高松丸亀町の好例に学ぶ〜

高松市中心部に位置する高松丸亀町商店街は、江戸時代から400年以上の歴史を持つ商店街です。

人口減少や大型店の進出になどにより地方の商店街が疲弊するなか、高松丸亀町商店街も例外ではありませんでしたが、平成の再開発により賑わいを取り戻しました。

 

 

その取り組みは全国的に評価され、2006年の経済産業省大臣表彰をはじめ、2008年には(社)日本都市計画学会 最高位学会賞 石川賞などを受賞。現在も全国から視察が相次ぐなど、注目を集めています。

今回は、高松丸亀町商店街振興組合理事長の古川康造氏に、再開発事業についてお話しいただきました。

 

 

 

再開発の鍵は、土地問題の解決

高松丸亀町商店街では、平成元年頃から再開発事業の検討がはじまり、平成18年12月、再開発ビル第一号となるA街区再開発ビルが竣工しました。

 

「今回の取り組みの核心となるのは、土地問題の解決。これに尽きます。地権者の協力が得られなければ再開発はあり得ないということは以前より言われてきましたが、それをどうやら地方都市高松の商店街が実現したということで国内のみならず海外からもご注目いただいているようです」と古川氏。

 

その具体的な内容は、定期借地権を活用した「土地の所有権と利用権の分離」。

商店街に目を向けると、高齢化による後継者問題などで商売を続けることが難しくなり、衰退。そして土地は相続のたびに細分化されていく……。そんな状況を解消するため、高松丸亀町商店街振興組合では国の制度を利用し、まず廃業支援を行いました。地権者を正しく廃業させ、過去の借金を清算。土地についている担保を外し、新たに60年の定期借地権を設定。地権者は土地の所有権は失わずに、利用権だけを放棄し、その上に共同出資会社が新たなビルを建設するという計画を立てました。

 

●定期借地を利用した再開発の事業費削減効果

従来型の再開発では、地権者から土地を買い取り、その上に新たな建物を建てることになりますが、丸亀町方式の再開発では、前述の通り定期借地を活用することで土地を60年限定で借りるため土地代は0円、建物の建設費用のみとなるので総事業費を大幅に削減できるのです。

 

 

 

 

再開発のプロ集団によるまちづくり会社を発足

こうして、60年の定期借地権により一旦白紙となった土地に再開発ビルを建設しますが、地権者ではビルの運営はできないので、新たにまちづくり会社を発足。土地の一括有効活用を委任しました。

 

まちづくり会社では、商業ビルの運営管理者や施設管理者、テナント誘致の専門部隊、販促のプロなど各分野で高いスキルを有する人々をプロパーの社員として雇用。彼らが再開発ビルをマネージメントすることで商業を集積し、さらに住宅の整備や病院、介護施設など必要な施設を開設し、まちづくりを行うことによって地域を活性化。その利益が向こう60年限定で地代として地権者に配当され、これが新たな税収を生むという仕組みをつくりました。

まちづくりは発想の転換から

「そもそも、商店街の衰退は居住人口の減少が大きな要因です。バブルで地価が高騰し、街中はとても人の住める状況ではなくなったことで空洞化が起こり、郊外化。追い打ちをかけるように市街化調整区域も全廃され、都市は大きく郊外に拡散したのです」と古川氏。

 

では、郊外に拡散した人々をどうやって街中に再び集めるか。

そこにはまちづくり、再開発事業における3つの発想の転換がありました。

 

1.失敗例から学ぶ

全国各地で行なわれている再開発事業。自ずと成功例に関心が寄せられるものですが、あえて失敗した再開発を徹底的に調査。そこからたくさんのことを学び丸亀町方式の再開発を編み出しました。

 

2.商業地ではなく居住地としての視点

郊外の大型店舗に奪われた「お客様」を取り戻すのではなく、街中で生活する「居住者」を取り戻すという考え方にシフト。

 

3.官主導から民間主導へ

再開発事業は行政がやることという認識がありますが、前例を覆し、新たなまちづくりを試みるため、民間主導の再開発に取り組みました。

 

街全体のイメージは「変身する商店街」

街をAからGまでの7街区に分け、それぞれに役割をもたせ、身の丈にあった開発に着手しました。

 

●A街区

平成18年竣工。セレクトショップゾーンをコンセプトとし、高級店を集中的に配置。また、丸亀町のシンボルとも言える広場を整備し、賑わいを創出しました。

 

●B街区

平成21年竣工。コンセプトはフードコート。居住者の減少により業種の偏りが起こり、開発前は飲食店が一軒もなかった商店街に新たなスタイルの飲食店を誘致。36店舗が営業しています。

 

●C街区

平成21年竣工。美と健康をコンセプトに、病院やビューティークリニック、歯科、リハビリセンター、血液センター、鍼灸院、フィットネスジムなどを開設

 

●D〜F街区

計画策定し、平成30年より再開発に着手。

 

●G街区

平成24年竣工。都心生活や都市観光をコンセプトとし、大型マンションやホテルを誘致。路面通りには広場を整備するなど公共空間をふんだんに取り入れました。

街に居住者を取り戻す仕組みづくり

丸亀町の再開発事業は、商業地の再生以前に、いかに居住者を街に取り戻すか。これが最重要課題であったため、再開発ビルの上層階には高齢者向けのマンションを整備しました。

 

「丸亀町全体で400戸の居住区を整え、1500人の生活者を呼ぼうという計画で、現在200戸が完成しています。おかげ様で完成すると即完売という状態ですが、そのほとんどは高齢者です」と古川氏。

 

そして、高齢者が安心安全に暮らせる街にするためには、住宅整備という受け皿の整備だけではなく、商業地の業種の再編成が求められます。

 

「街に人が住まなくなると、商店街では業種の偏りが起こります。丸亀町でも、生鮮食品や日用品などの物販店が廃れ、残ったのは高級ブティックばかりという状況でした」

 

そこで、業種の再編成を行うにあたり、商業者の目線ではなく生活者の目線に置いた選定基準を設け、テナントを誘致しました。

 

「『歳をとったら丸亀町に住んでみたいよね』と言われるような、特に高齢者にとってこれでもかというぐらいのパラダイスをいかに合理的に、スピーディーに創り上げるか。だから、私たちが行っているのは実は商業地の再生ではなく、ライフインフラの再整備なんです」と話されました。

 

 

 

 

自宅が病院に!かかりつけ医の新たなカタチ

今回の再開発事業で最も注目を集めたのは病院の開設だったといいます。

 

「一見、都市部は医療が集積しているように見えますが、それは大病院があるから。机上の理論ではあたかも医療は充実しているように見えますが、いざ町場におりてみると町医者はいない。街中こそ医療過疎になっていたんです。だから今のうちにかかりつけ医を整備しておこうというのが病院開設の背景です」と振り返ります。

 

 

●新しい町医者の仕組み

今回開設した病院は再開発ビルの中層階45階に展開。入院施設はありませんが、6階以上にマンションがあるため、病院の上に400戸の病室をのせているということになります。

 

ドクターはマンションの入居者を往診、回診。最新機器による検査も充実しています。また、後方支援病院として高度医療を提供する県立病院、国立病院と連携。重大な病気が発覚すると後方支援病院で手術を受けることができます。そして術後、ICUを出れば入院せずに自宅へ戻った患者を病院のドクターがケアするという新しい町医者の仕組みを編み出しました。

 

自身が生活している下に24時間対応のドクターが駐在。最新の検査機器による高度な検査、その後の高度医療、そして在宅で終末医療まで担保されているマンションということで入居者は大喜びだったそうです。

 

現在、マンションが即完売している大きな理由は、やはりこの病院開設にありました。

 

この病院のポリシーは、自宅は世界最高の特別室。

 

「こう考えると、新たに莫大な投資をして入院施設を備えた病院を開設しなくても、街中に病院機能がスパッと入り込むことができる。上のマンションで生活している高齢者のみなさんはまさに病院で生活しているということ」と古川氏。

 

 

現在整備済みの診療科は、外科、整形、内科、眼科、婦人科、ペイン。この中でも特に力を入れているのがケア。病院開設にあわせてリハビリセンターを新たに整備し、術後のアフターケアをしっかりとできる態勢を整えました。

 

パブリックスペースを整備。行きたくなる商店街に

マーケティング調査をすると、商店街に行きたくない理由の一つとして「休憩する場所がない」「トイレがない」という意見が多く挙げられるそうですが、この2点は商業地として致命傷。

 

「一般の消費者のみなさんは、郊外の大型店で、豪華なトイレ、ふんだんな休憩スペース、抜群の空調に品揃え、ゾーニング、無料の駐車場という環境で日々買い物をしています。

 

小さなお子様連れの最も行きたくない場所の一つに商店街が挙げられているというアンケート結果も随分といただいたので、今回の開発にあわせて公共空間を非常にたくさん整備しました」と古川氏。

 

 

公共空間は一切利益を生まないため、その整備に民間投資が起きないのは当たり前のこと。公共空間は行政が整備するのが日本では定説となっていますが、官主導では規制が多く、機能的な広場を整備するのは難しいという状況が続いていました。

 

そこで、丸亀町では、一切利益を生まない公共空間の整備を民間投資で行える仕組みを構築。これがまさにエリアマネジメントです。定期借地権により借り上げたエリアの一括運営管理のなかでパブリックスペースをたくさん整備したのです。

 

●こだわりの広場「札の辻」

ヨーロッパの古い街に行くと、ほぼ例外なく市の中心部に大きな広場があり、市民がうまく使っています。今回整備された広場は、センターに円形のデザインを配し、開発に合わせて建物を大きくセットバック。民間の土地を活用して広場の面積を4倍ぐらいに広げたのです。

 

緊急車両の通行さえ確保すれば、飲食や物販のみならず、お酒の販売や火の使用、ベンチやステージの設置もOK。

 

この広場では、商店街がイベントを企画運営するのではなく、「市民の皆さんがやりたいことを自由に表現できるステージとしている」のだそう。

そして、市民の企画したイベントを、まちづくり会社のイベント運営のプロがサポート。現在、この広場では年間200本を超えるイベントが市民の持ち込みにより行われています。

 

「まさに市民のみなさんが一切ストレスを受けずに自由に使える、しかも全天候型の大きな広場が街の中心に見事に出来上がりました」と古川氏もその成果に達成感を滲ませます。

 

新しい商店街のカタチを目指して

結びとして、古川氏は次のように述べられました。

 

「人口減少、高齢化社会、経済マイナス成長という大地殻変動が起こっている昨今。人口減少は世の中のさまざまなビジネスに大きく影響を与え、従来のビジネスモデルが合わなくなってきています。

 

その最先端が商店街。全国の商店街が一斉にシャッター通りになっている。では生き延びるためにどうすればいいのか。それは公共性です。公共性に目覚めない限り、商店街はその存在意義を失ってしまう。

 

今や商店街は、単にモノを売ったり買ったりするためだけの場所としての市民権を失いつつあります。

 

昔のようにたくさんの人が生活をして、そのなかで新たなビジネスモデルが創生されたり、さまざまな分野の方々と連携したステージづくり。

 

これこそが私たちの商店街が生き延びる唯一の方策であると判断しました」

 

 

土地の所有権と利用権の分離からはじまった丸亀町方式の再開発事業に、参加者の皆さんは大きな関心を寄せ、真剣に聞き入る姿が印象的でした。

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